第2章 特別な人(秀吉)
「貴様、何か勘違いしているようだな。今この俺が説教をしているのは、もちろん
愛を放置したことではない。なぜ〈何も用がない〉と嘘を言ったのかと言っているのだ。」
『申し訳ございません。』
「今日の仕事に関しては、わざわざ休みのお前でなくとも、代わりはいくらでもいる。
その位の判断つかなかったか。もう良い。埒があかぬ。」
『…っ。』
「して、三成、愛の様子はどうなのだ。」
『愛様は、泣きはらしてお疲れのご様子。お眠りになられておりました。』
「そうか。まぁよい。それぞれ仕事に戻れ。」
夕餉時、愛付きの女中が、
「愛様は体調が優れないので今日はお召し上がりにならないそうです。」
と伝えにきた。
『体調が優れないってどんな風に?』
家康が訊く。
「すみません。襖越しでございましたので…。
このままお休みになるとの事でした。」
『わかった。後で行ってみる…。』
(薬で治るようなものじゃないだろうけどね…)
「おい、秀吉。」
いつになく真剣に光秀が声をかける。
「お前じゃ愛を余しているのだろう。
俺が面倒みてやってもいいのだぞ。」
『馬鹿いうな!お前だけには絶対渡さん!』
声を荒げて秀吉が言う。
「へぇ。」
それを聞いていた政宗はにやっと笑い会話に入る。
「光秀に・は、ってことは、俺ならいいって事だな?」
『愛は誰にも渡さない!』
さっきよりも怒りを込め、更に声を荒げる。
そのやり取りを聞いていた三成は、
こっそり、ふふっと笑みを浮かべ、
(愛様、秀吉様も、余裕なく大人気ない時があるみたいですよ…)
と、心の中で呟いた。