第13章 忍びの庭 終章
「今…は?」
『え?』
愛の意外な言葉に佐助が目を見開く。
「佐助君…私…三成くんから告白されたの」
『石田三成…』
佐助の顔がサッと曇る。佐助にとっては、一番恐れていた事だった。
いつも愛の近くにいて、自分を見張っていた。
石田三成と言えば、現代では有名な豊臣秀吉の家臣で切れ者の参謀。
頭脳明晰だが、何を考えているかは捉えようのないところは、
側から見れば佐助と似ているのかもしれない。
唯一で絶対的に違う、エンジェルスマイルの持ち主だと言う事を除けば。
『君は?石田三成が…その…』
「………」
愛は俯いたまま何も答えない。
『だめだ!』
愛の沈黙を打ち破るように、そう叫ぶと
思わず力強く抱きしめていた。
『もう、君を他の人に渡すつもりは無い!
あの時も、君は俺の質問に黙っていた。だからそれを俺は肯定だと判断した。
だけど、今はもしそうだったとしても、それでも愛を他の男に譲る気はない』
幼い頃から一緒に過ごして、こんなに感情的になる佐助を自分は見た事があっただろうか。
そして、自分はこんなにも心からの幸せを感じた事があっただろうか…。
愛は、佐助の腕の中でとても冷静に、でも湧き上がる佐助への愛しさの中で、
何年か振りに呼ばれる呼び捨ての名前を聞いていた。
そして、そっと佐助の背中に腕を回すと、
その頼もしいうでに抱かれたまま、
「私はずっと佐助君に片想いだと思ってたよ…。
初恋だったあの頃も、さん付けで距離を置かれたあの時も、
未来で一人ぽっちにされると思ったさっきまでも…」
佐助はその腕の力を緩めると、愛も佐助を見上げる。
そっと愛の頬に佐助の手が添えられた。
それは、壊れ物を扱うように繊細で、大切なものを覆うように優しい。
愛が目を閉じると、ぎこちない柔らかい感触が唇に触れる。
二度、三度と触れるだけのキスをして、顔を離す。
お互いの顔を至近距離で見つめると、お互いに照れくさくて少し笑ってしまう。
「さすけく…」
名前を呼ぼうと開いた唇ごと食む様なキスが再び降ってくる。