第13章 忍びの庭 終章
「私クイズの何に答えられなかったの?」
『そ、それは…』
佐助はほんのりと目元を赤く染めて、少し言い淀んだ。
愛に告白できる権利をかけて、愛の兄が出したカルトクイズ。
たった一つの不正解で、佐助はその権利を失い、
罰として今後一生愛の呼び方をさん付けにしなければならなくなった。
「お兄ちゃんたちが居なくなっても、まだその罰ゲームを守るくらいの問題って、
一体なんだったの?ずっと気になってたんだよね」
佐助は逸らして居た目を愛に向ける。
『それに答えたら、許してくれるの?』
愛は黙って頷く。
『……。わかった』
えらく勿体つける佐助に、質問した愛まで緊張が伝わってくる。
『俺達が最後に出された問題は…
【愛の初恋の人は誰でしょう】だったんだ』
「えっ?!」
想像もしていなかった問題に、愛は一瞬にして顔を真っ赤にする。
当然、その答えを愛はわかっているからだ。
『俺は、ずっと君が好きだったのに、いや、好きだと思ってたのに、
この問題の答えを知らなかった。ずっと一緒に遊んでいたお兄さんや、ヒロトは知ってたのに。
それで、俺は悔しいとかそういう事よりも、自分の君への〈好き〉という気持ちが
本当にそうだったのかさえわからなくなった。自分が分析しきれなくて、自信がなくなった』
佐助の言葉の一つ一つに驚きが隠せない。
『あの時の俺は、君を諦めたんじゃない。
好きでいる権利なんか元から無かったんだって思った。
そんな俺に、君の兄さんは、
そんな中途半端な気持ちで馴れ馴れしく愛の側にいるなよ。
って言って、罰として今後ずっと、俺自身に自信が持てないうちは
〈愛さん〉て呼ぶ事になった』
愛は、呆然としながらも、
「全然知らなかった…」
と、小さく声を吐いた。
『だから、君がヒロトに告白されたって俺に相談しに来た時、
あの時の俺には、止める権利も勇気もなくて…祝福するっていう道しか選べなかったんだ』
佐助は諦めのような、悔しさのような、どの感情でもないような表情で言う。