第13章 忍びの庭 終章
『だーかーらー、そんなに気になるなら、本人に聞けばいいだろ。
俺は、あの子じゃ無いから聞かれてもわからない。
いつもみたいに、散歩にでも誘って見れば』
半分ヤケクソで言い放った家康の言葉に、三成は最高の笑顔で答える。
『そう…ですよね!確かに、家康様の事は好きですが、
愛様のように胸が締め付けられたりしません。
だから、愛様ではありませんものね』
『はぁ?ちょ、お前、何いってんの?ホント調子狂うわ…』
さっきまでの難しい顔を、キラキラな笑顔に変えた三成を見て、
家康は盛大なため息をついた。
『おい、愛、今のうちに着替えてくるといい。
夕餉の準備が出来たら呼びに行ってやるから』
秀吉にそう言われている愛を見て、
『今ですかね…』
三成が呟く。しかし…
「秀吉さん、着替えた後、佐助君と話がしたいの。
いい…かなぁ…」
と、愛の言葉が聞こえてくる。
『別に構わないだろ。もう敵じゃないんだからな。
でも、今日は城を出るなよ』
秀吉の言葉を聞いて、愛の顔がぱっと明るくなる。
「ありがとう、秀吉さん!」
愛は、勢い良く秀吉に抱きつくと、直ぐに離れて佐助の元へと向かう。
『愛さん…どうかした?』
「あのね、今からこれ、着替えてくるんだけど…
夕餉に、宴をするって言うから、それまでの間話したいことがあるの」
佐助は謙信ちらっとみる。
『かまわん』
『佐助、喰われるなよ!イノシシに!』
「ちょっと…食べないよ!失礼な」
愛が口を尖らせて抗議する。
『幸は放っておいていい。じゃあどうしたらいいかな』
「30分後にそこの中庭でどうかな」
『さんじゅっぷんてなんだ?』
『幸は放っておいていい。じゃあ後で』
佐助と幸村がじゃれあい始めたのを見届けて、愛は自室へと急いだ。
『さてと、俺たちも着替えましょうか』
家康が伸びをしながら秀吉に言う。
『そうだな。三成も戻るだろ?』
秀吉が三成に声をかけるが、
三成は愛の消えて行った廊下をずっと眺めていて気づかない。
『三成!』
珍しく家康が大きな声を出す。