第13章 忍びの庭 終章
『ほう。その普段は男たちにちやほやとされて現を抜かしている姫君が、何故この場にいる』
謙信は改めて不機嫌そうに愛を見る。
「ちやほやなんてされてません!政宗は揶揄ってるだけで、
家康はそんなに私に興味ありませんから!」
そう一気に言う愛に、政宗と家康は、
あからさまに心外だと言う顔をしている。
『馬鹿馬鹿しい。なんの答えにもならんな』
「そんなこと言うなら、私の質問にも謙信様は答えてないじゃないですか!」
『何?』
幸村は謙信から、ピキっと不穏な音がしたような気がした。
(あのイノシシ女相変わらず気が強えぇな…ったく…)
『さっき秀吉が、あの女も関係あるって言ってたし、
佐助が捕まった経緯くらい聞いたらどうなんです』
幸村が謙信に小さく話しかける。
『ふん。佐助、貴様何故この様な事態になっている』
「すみません。自分の立場的に勝手に話すのは難しいかと」
さすがの佐助も突然の事に言葉につまる。
すると、光秀が
「いいんじゃないか?結局のところお前と愛しか
深いところまではわからない。お前が説明してやれ」
と、助言をする。
「わかりました…。それでは…」
佐助は、なるべく謙信と幸村にわかりやすい言葉を選んで説明をした。
自分と愛がタイムスリップでこの時代に飛んできてしまった事。
お互いが、謙信、信長の命を偶然にも救っている事。
二人は幼馴染で、ここにくる前はずっと一緒に居た事。
時々安土城に忍び込んで、愛の様子を見ていた事。
今回の戦の前にワームホールが再び開くとわかった事。
そこまで話したところで、黙って佐助を見据えて聞いていた謙信の顔色が変わる。
『お前はどうするつもりだった。佐助』
冷え冷えとした声色には、答え次第では容赦の無い事を連想させた。
『俺は…四年もお世話になった謙信様を残して帰るというつもりはありません』
その言葉を聞いても、未だ謙信の表情は氷の様に冷たいままだ。
『そうか。今までの話を聞いて、
俺はてっきりお前があの女を好いていると思ったが、そうではないようだな』