第13章 忍びの庭 終章
「早ければ今日にも謙信様から返事が来るかもって言われて、
どうしても佐助君に会いたくなっちゃった…」
『そうか。随分早かったんだな。
どんな理由であれ、君の顔が見られたのは嬉しいな』
ずっと笑みを絶やさずに佐助が答える。
「ちゃんと、ご飯とか貰えてるの?」
『あぁ。暗いこと以外は、そんなに悪くない待遇だと思う。
君のおかげかもしれないな。光秀さんも、ちょくちょく声をかけてくれる』
その言葉に愛は驚く。
「そうなの?ただ見張ってる訳じゃないんだ」
『ただ見張っているより、厳重に見張られてるんじゃないか?』
そう言うと佐助はフッと小さな笑いを零した。
「でも良かった元気そうで」
愛も、小さく笑う。
暫く他愛もない雑談をしていると、通路から足音がした。
『愛、そろそろ戻るぞ。
今日の朝餉は広間に来るように伝言があった』
光秀の声がかかる。
「わかりました。すぐに行きます。
それじゃ、佐助君…また来るね?」
『ありがとう。でも、大丈夫だから、余り無理しないで』
そう言葉を交わすと、愛は光秀に連れられて佐助の牢を後にした。
愛の姿が見えなくなると、佐助はひとつ溜息をつく。
『まさか戦国ライフが、謙信様に迷惑をかけて終わる事になるとはな。
幸とも、もう一度ちゃんと話がしたかったが…』
今から訪れる自分への運命を思って、佐助は静かに目を閉じた。