第12章 忍びの庭 後編
「いや、三成は織田軍のための策を考えたと思うぞ。
お前、愛が居なくなった毎日を考えろ。
つまらないものになるぞ?久しぶりに暴れたかったが、あいつを失うくらいなら我慢するか」
政宗が、三成の肩をポンポンと叩きながら、家康に向かって言った。
「別に…静かになって俺は過ごしやすくなると思いますけど?
まぁ…ワサビやウリや照月は寂しがると思いますけど…」
目を逸らしながら言う家康に、
「全く素直じゃないな、お前は…」
政宗が呆れ気味で言う。
「政宗の言う通りだ。全ては織田軍の為になる策を考えたようだな。
秀吉、お前は一回愛を部屋に連れて行け。落ち着いたら秀吉は戻れ。
佐助は光秀に任せる。その後、上杉に早速書状を出す。三成と政宗はそのまま残れ」
「はっ」
信長は全員に指示を出し、各々が動き出す。
「ほら、一回戻ろう。茶でも入れてやるから」
チラッと佐助を見れば、光秀に連れて行かれるところだった。
「秀吉さん…」
心配そうな顔をする愛に、
「大丈夫だよ。お前が悲しむような結果にはならない。
ほら、とりあえず立て」
そう言うと、手を差し伸べて愛を立たせる。
「ありがとう…」
小さく礼を述べる愛に、
「よしよし、いい子だ」
と、言いながら頭を撫でながら広間を出る。
その様子を、心配そうに遠くから見ていた三成に、
「お前、大丈夫か?」
と、政宗が声をかける。
「え?どうされたんですか?」
「とぼけるなよ。愛と出かけて行ったのを見てた。
愛がここにいる限り、お前への誤解は解けると思うぞ」
政宗の、何でもわかっているような言い方に、
「さすが政宗様ですね。全てお見通しなのですね。
ええ。時間が増えましたから…しっかりお伝えして行けたらと思います」
そう答えた。
「ただし、俺も愛を狙ってるのには変わりないからな」
そう言うと、政宗は三成の背中をバシッと叩いて笑う。
「お前たち。あれは俺の持ち物だと言う事を忘れるなよ」
高い位置から信長の楽しそうな声が聞こえてきたのだった。