第12章 忍びの庭 後編
『続きは私が説明しましょう』
愛の言葉を受け、佐助は
自分と愛がどんな経緯で此処にいるかの説明をする。
ワームホールが突然開き、愛は本能寺へ、佐助はそれよりも四年前に謙信の元へ。
そして二人はそれぞれの命を救い、今この状況にあると言うことを。
「俄かには信じられないけど…」
家康はまだ怪訝な顔で言う。
政宗は、
「そう言われたら、全くこの時代に馴染まない雰囲気の愛を理解できる気はするな」
と、笑みを浮かべている。
「愛、本当なのか…?」
秀吉は、もう一度愛を見ると、力強くうなづく目を見て、
「お前は嘘をつけないからな。どうやら本当のことみたいだ…」
と、渋々の納得をした。
「三成くんには、私から話したの…」
そう言うと、ただじっと黙っていた三成が漸く口を開く。
「はい。愛様から、寸分たがわぬ説明を先程頂きました。
私も、愛様に嘘はないと思っています」
『皆様に、折り入ってお願いがあります』
一通りの言葉が出たところで、佐助が信長と武将たちを見渡す。
「捕らえられた分際で、聞き入れられると思ってんの?」
家康が冷たい声を出す。
『無理を承知です。明日、愛さんを連れ出そうとした理由は、
数日後に本能寺にワームホールが開いて、五百年後とつながる可能性が高いからです。
それを逃せば、愛さんは一生故郷に帰れなくなります。
私はこのまま捕まってもいい。何をされても良い覚悟です。
ですが、どうか愛さんだけは帰してあげてもらえませんか。この通りです』
縄で縛られたままの姿で、佐助は頭を下げる。
普段の佐助からはあまり見られない熱のこもった言葉だった。
「だめだよ!さっきも言ったでしょ?佐助君が一緒に帰れなかったら意味がない!
お願いです。佐助君を許してあげてもらえませんか?私…もう佐助君しかいないんです…」
ー佐助君しかいないんですー
その言葉は、三成の心臓を貫いた。
(貴女が求めているのはやはり…私では…)
こんな時にまで、自分の心が優先される自分が嫌になりそうだった。