第2章 特別な人(秀吉)
城下に出ると、三成はなにやらメモらしき物を見ながら歩みを進める。
『まずは、反物屋さんに行きましょう!』
そう言うと、愛の手を引きながら、いつもの反物屋に向かう。
(秀吉さんも、、まずは反物屋さん行くんだよね。
あれ、秀吉さんが書いたメモなのかな…)
「み、三成君、もう石段終わったし、手、大丈夫だよ?」
街中の目線が気になりそう告げるが、
三成は至って真剣な顔で、
『いえ、今日は秀吉様の代わりですので。』
と、反対に握っている手に力をこめる。
(こりゃ、もう諦めるしかないか…)
三成に気づかれないように溜息をつくと、
愛は開き直って、手を繋がれることにした。
『さぁ、反物屋です。
愛様、お好きな物をお選び下さいね。
秀吉様より、愛様が気にいるものを全て買って差し上げるように
言われておりますので!』
そういうと、愛を見てニコっと微笑む。
その言葉に愛は複雑な気持ちになる。
(秀吉さん、どういうつもりなんだろう…)
三成との休日を楽しもうと心に決めた愛だったが、
この言葉を聞いて急に暗い気持ちになった。
「今日は見るだけでいいよ。前に買ってもらったのもあるし、
そんなに困ってないから…」
そう告げる。
『それでは、私が怒られてしまいます…』
三成もまた困った顔をする。
(そうだよね…三成くんは、言われた通りのことしてるだけだもんね…)
悩んだ結果、愛は三成に似合いそうな綺麗なすみれ色に、
格子柄が丁寧に織り込まれた反物を1つ手に取る。
(今日のお礼に、三成くんに羽織を仕立ててあげようかな)
「じゃぁ、これにするね。」
自分のものとは思わない三成は
『素敵な色ですね。愛様の選ぶ反物は素晴らしいです!』
そういうと、それを手に取り買いに行く。
「嬢ちゃん、今日はこれだけでいいのかい?」
店の主人に言われるが、
「今日はこの色のを買いに来たので、素敵な物が見つかって良かったです!」
と笑顔を向ける。
(秀吉さんだったら、この後大量に買うとこだけど、今日はこれだけで済まそう。)
「そうかい、そうかい」
と店の主人は嬉しそうに反物を包む。
三成は包みを当たり前のように預かり、代金を払う。