第12章 忍びの庭 後編
「佐助君は…」
佐助自分にとってなんだろう…。
漠然と、頼る人がいなこの場所で、いつも心の拠り所にしていた。
会えれば心の底から嬉しくて、寂しい時はいつも思い浮かべていた。
それは、幼馴染だから?唯一自分を知ってくれてるから?それとも…
『恋仲では…ないのですか?』
三成の質問に、少し頬を染めて戸惑う愛。
それでも、敢えて真剣に考える事をしてこなかったこの問題は、
今直ぐに答えが出るものではない気がした。
「まだ、わからない。佐助君とは、本当に長い時間を一緒に過ごしてきたけど、
向こうにいた時に恋愛感情を持ってたのは…もう随分昔。
でも、こっちに来て、心細くて、いつも佐助君を思ってたのは確かだよ。
だけど、それがどう言う気持ちなのか…正直わからない…」
その返事に、三成は少し安心したように顔を綻ばせた。
『それは、まだ私にも分があるということでしょうか』
そう言うと、愛に微笑む。
「え?でも、私は帰らないといけないから…佐助君と約束してる…
三成君に想ってもらう資格がないよ」
申し訳なさそうに三成を見る。
『愛様…どうしても行ってしまわれるのですか…
私には…時間がこんなにも残されていない…』
「三成くん…」
こんなにも自分を想ってくれていたのだと知ると、
愛の胸は更に痛んだ。
それでも、未来に帰らなければならない。
家族はいないけど、やり残した事もある。
何より、自分のために奔走してくれた佐助との約束を不意にすることはできないから。
ごめんね…
そ言おうとした瞬間、
ーーガシっーー
愛は力強く三成に抱きしめられた。
それは、三成の体温が全て伝わるほど熱く、感情的なものだった。
『行かないで下さい!私は…貴方がいなければ、もう私ではいられない。
例え…貴方が私を直ぐに選んでくれなくてもいい。
それでも、貴方を側で見られなくなることは耐えられないのです。
だから…お願いです!行かないで…下さい』
一気に言い切ると、その腕にもう一度力を込める。
愛は、初めて見る三成の感情的な行動に、
暫く何も言えず、ただその腕の中で何も考える事ができなかった。