第12章 忍びの庭 後編
『まぁ!私にですか?こんな素敵なものを…
ありがとうございます。愛様。大切に使いますね』
しのは、嬉しそうな顔で巾着をを撫でながら礼を言う。
『よし、じゃあ行くぞ。
愛がすっかり世話になったな』
政宗もしのに向かって礼を言う。
「本当にお世話になりました…
三成くんの事、宜しくお願いしますね」
愛としのが顔を見合わせて笑っていると、
部屋の奥から
キキッ!
と、ウリの声がする。
愛はウリに近づくと、しゃがみこみ、
そのフワフワの背中をそっと撫でた。
「ウリも、秀吉さんの言うことちゃんと聞くんだよ?
三成くんとも仲良くしてね」
キーッ!!
どちらとも取れないウリの返事に、愛は困ったように微笑む。
「政宗、お待たせ。行こうか」
『おう。こっちはいつでも行けるぞ』
愛の少ない荷物を全て抱え込んだ政宗が言う。
御殿の外に出ると、門まで見送りに来たしのや、他の女中たちに深く頭を下げる。
『すぐ遊びに来て下さいねー!』
若い女中たちが元気に手を振る。
愛は、それに答えることもなく、笑顔で小さく手を振った。
(ごめんなさい。みんな…)
秀吉の御殿をあとにして、俯いたままの愛を
政宗は不思議そうに見ていた。
『お前、そんなにあそこが気に入ってたのか?』