第11章 忍びの庭 前編(佐助)
夕餉の席では、政宗をはじめ、秀吉も三成も和やかに笑顔を見せていた。
それみているだけで、愛の中は余計に靄が広がる。
あんな息急き切って、探されるほどの事なのだろうか。
暗くなってしまったから?
それに、わずかな間ではあったが、あの三成の態度は絶対におかしい。
(相当、信用…ないんだろうな…もう顔に出すなって方が無理だよ)
愛の頭には、今日出会った佐助の姿が浮かんで来る。
(着物作るって言ったら、やっぱり凄く喜んでくれたな。
でも、なんとなく…佐助君、別れ際何か言いたそうだったんだよね…
逢いたいよ、佐助君…)
夕餉が始まって間も無くから、
ずっと箸と茶碗を持ったまま動かなくなった愛に、
政宗は今までの和やかな笑みを消し、不機嫌そうに愛に話しかける。
『おい、愛。
なんでそんなつまんなそうな顔で、一口も食わずに固まってんだよ』
急に名前を呼ばれ、びっくりした愛は、
「えっ?あ、ごめん。考え事してた」
とだけ、答えた。
そのやり取りを、心配そうに秀吉と三成も見守っている。
『ったく…。お前がそんな顔してるんじゃ、
まだこいつらと戦の話してる方がマシじゃねぇか』
ーだから、笑ってくれー
それが、政宗の想いだったが、
「そう。ごめんね。どうぞ、三人で戦の話してて」
愛は、スッと立つと、誰の顔も見ずに襖を開けて出て行った。
『お、おい!バカ!本気にするな!』
『愛様!』
『政宗…お前なんて事言ってんだよ…』
『おい、愛!』
広間から飛び出した政宗が自室へと急いでいる愛の手首を掴んだ。
「離して!」
『どうしたんだよ、お前何か変だぞ?何があった』
「政宗には関係ないでしょ。政宗だけじゃない…
みんなには関係ない。私に構わないでよ!」
涙を零さまいと、必死に唇を噛む。
なんで自分がこんな感情になっているのか、
当の愛にもわからなかった。
ただ、穏やかな気持ちでいられない…
三成に信用されていないからなのか、
佐助に逢えないからなのか…
兎に角今は一人になりたかった。
余りにも必死な愛の様子に、
政宗も掴んでいた手を離す。
愛は一目散に去って行った。