第11章 忍びの庭 前編(佐助)
「すっかり暗くなっちゃったね、ウリ。
急がないと、また怒られちゃう…」
みよしのを出たのは、もうすっかり陽が沈んだ後だった。
夜の城下は賑やかさはなく、ひっそりとしてしまう。
前回、三成と歩いた事を思い出しながら、歩みを速める。
(あの夜、佐助君だったんだなやっぱり。
三成くんに見つからなくて良かった…)
もし、あの時見つかって戦うことになってたらとゾッとする。
(誰にも傷ついて欲しくないから…)
買い込んだ糸の包みをギュッと抱きかかえる。
もう少しで御殿に着くという距離まで来て、
愛は漸く足を緩める。
「はぁ…やっと着くねウリ」
ウリに話しかけながら、そっと身体を撫でる。
『愛様!!!』
「えっ?!」
急に名前を大声で呼ばれ、大きく振り返る。
すると、後ろから息を切らせながら走ってくる三成が見えた。
「三成くんっ?!」
『はぁ…はぁ…愛様っ…良かった…ご無事で…はぁ…はぁ…』
普段の三成からは想像もできないほどの息の乱れ様に、
相当走り回ったのだと思った。
「ど、どうしたの?大丈夫?三成くん…」
まだ肩で息をする三成の背中をさすりながら、声をかける。
『愛様が一人でお出かけになったと聞いて、何かあってはと…
みよしの様まで向かったのですが、どこかで入れ違ってしまったようで…』
「そんな…大丈夫だよ…」
そう言う愛に、三成は困った様な顔を見せる。
『前の様に、誰かにつけられるかもしれません。
特にこんな暗くなっては…側に居なければお守りすることもできません』
三成の真剣な言葉に戸惑ってしまうが、確かに夜の城下町は人通りも少ないし、
心配かけた事には変わりないと思い素直に謝る。
「ごめんなさい、ありがとう。
今度はちゃんと前もって言うからね」
その言葉に漸く安心した様に三成は笑顔を見せる。
『はい。そうして頂けると安心ですので。
さぁ、帰りましょう。荷物お持ちしますね』
そう言うと愛の包みを持つ。
「え、いいよ、軽いから…」
愛の言葉にニッコリ笑うと、
『持たせて下さい。愛様はウリも居ますしね』
そう言って三成はウリに顔を向けるが、
〈キーっ!〉と、相変わらずウリは三成に対し敵意を剥き出しにしていた。