第11章 忍びの庭 前編(佐助)
三成と光秀がそろって広間に顔を出すと、
間も無く信長も現れ、軍議が始まる。
『今日は、光秀と三成から報告がある。早速はじめろ』
「はっ。
安土の城下町に上杉の鼠が潜伏している事が判明しました」
光秀は一同に報告を始める。
『上杉の鼠だと?向こうのゴタゴタが片付いているって事か…』
秀吉が眉をひそめる。
「そのようだな。三成から報告を受け、水面下で調査を進めたが、
どうやら、上杉・武田は、もう一度信長様との戦を立て直している」
『それで、その鼠が何だって言うの』
家康が、話の先を促す。
「三成の話だと、鼠は二匹。
一匹は真田幸村という事が判明した」
『へぇ、凄いな。真田が直々に偵察とは。
今すぐにでも会ってみたいもんだな」
政宗が楽しそうに声をあげる。
『それで?もう一匹は?』
政宗の言葉にため息をつきながら家康が更に訊く。
「おそらく、上杉謙信一番の気に入りの忍びだ。
ひと月ほど前から、安土城に忍び込んでいた可能性がある」
『安土城に?本当なのか?』
光秀の報告に、秀吉は怪訝な顔をする。
「 本当だ。詳しくは三成から」
そう言うと、光秀は三成に目配せをする。
「はい。忍びが立ち入っていたのは明確です。
念のため、安土城の警備を強化したのですが、その期間は入っておりません。
一度、強化を緩めたところ、再び怪しい人影があった事が報告されています」
『何で捉えなかったんだ』
秀吉が相変わらずの表情で三成を見る。
「その忍びは、光秀様の調べで上杉の右腕ほどの者とはわかったのですが…
安土城に忍び込んだ目的が、敵情視察ではなかったようで…」
少し歯切れが悪くなる三成に、家康が苛立ちを込めた声を出す。
『だから何なの?はっきり言いなよ』
「その忍びは、愛様に会うために安土城に忍び込んでいた模様です」
家康に睨まれ、三成はしっかりした声で答えた。
『愛に?!あいつ…間諜だったとでもいうのか?』
政宗が目を見開く。
「いや、その可能性は殆どないだろう。
愛自体に、怪しい動きはなかった。そうだろ?三成」
光秀が政宗に答え、三成を見る。
「はい。その可能性も含め、愛様には秀吉様の御殿に移しましたが、
愛様から接触をはかることは今の所ありません」