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イケメン戦国★センチメンタルLOVE

第11章  忍びの庭 前編(佐助)


『佐助戻ったのか?』

庵に着くと、奥から幸村の声がした。

「あぁ。今戻った。幸が先に帰ってるのは珍しいな」

いつもは行商人のふりをして安土を偵察している幸村が、
陽が沈む前に戻っているのは珍しかった。

『春日山から伝達が来て、すぐに戻って来いとのことだ』

「すぐに?またなんで」

間も無く越後に戻る予定ではあったが、直ぐにというのは寝耳に水だった。

『どうせ、謙信様の戦病が始まったんだろ。
まったく、信玄様がそばにいながら、なんでこうなるんだ…』

幸村は諦めたように大きなため息をつく。

「戦を決めたっていうことか…まずいな…」

佐助は呟くような声で言う。

『ん?なんか言ったか?
あ、そう言えばお前、あの女には会えたのかよ』

「あ、あぁ。愛さんには会ってきた」

なんとなく歯切れの悪い佐助に、幸村は訝しげな顔をする。

『お前、まさか…言わなかったのか?戦の事』

なんとなく顔を曇らせた様に黙っている佐助に、

『どうすんだよ。もう今夜立たないとまずいぞ。
あいつ今どこに居るんだ?』

と、訊く。

「豊臣秀吉の御殿にいるそうだ。
二ヶ月後に安土城で開かれる大きな宴の準備をしている」

その言葉に、幸村は少し馬鹿にした様な声で、

『呑気なもんだな。でも残念ながらその宴は開かれないんじゃないか?
謙信様がこんなに早く動くなんて思ってないだろうからな』

と、軽く笑ってみせる。
しかし、その言葉にも佐助は浮かない顔のままだった。

『どうしたんだ?佐助、なんか変だぞ』

幸村が少し面白くなさそうな声を出す。

「いや…宴だけは開いてやりたかったなと思っただけだ。
とても張り切っていた。それに…誕生日が…」

佐助に愛が、宴のために晴れ着を作ることになったと話していた時の顔を思い出す。
戦国時代に来てから、初めて見せる様な輝いた顔をしていた。
佐助が応援すると言うと、その顔は更に輝き、密かに佐助の心を焦がしていた。

『誕生日?なぁ、お前、あいつの事…』

幸村が心配そうに呟く。

「いや、何でもない。謙信様の機嫌が悪くなる前に辿り着かないとな」

そう言うと、庵を出る準備をはじめた佐助。

『あ、あぁ…』

(佐助もあんな顔する事あるんだな…)

幸村には、いつも無表情の佐助が少し哀しそうな顔をした様に見えた。
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