第11章 忍びの庭 前編(佐助)
『君に会いたかったから…っていう理由じゃ、
やっぱり納得いく説明にならないかな。
俺も、一生懸命理由を探しているんだけど、まだ分析出来ていなくて…』
佐助の顔が難しくなるのを見て、
愛はあわてて被りを振った。
「ううん。嬉しい!
私もずっと…逢いたかったから…
毎日、色鉛筆を見ると思い出すから…だから、嬉しい!」
愛は、この時代に来てからの自分の感情に戸惑っていた。
現代にいた頃は、佐助はずっと幼馴染で、愛を影から守ってくれていた。
けれど、戦国の世では自分の常識も覆されるし、命もあっという間になくなる。
そんな時にいつも心の支えになるのは佐助のくれた色鉛筆。
でもそれは口実で、いつも色鉛筆の先にいる、佐助自信を想っていた。
それがどういう事なのか、愛にも理解できていなかったが、
ウリに言った言葉が全てなのかもしれない。
佐助がいなかったら、何処にいても不安になるんだ…と。
「佐助君、あれからお城には行ってない?」
愛は、一番不安だった事を訊いてみる。
秀吉の御殿に住まう事になってから、一度も佐助に伝えられないでいたからだ。
『前に花畑であった時、城の警備が緩くなったって言ったよね。
罠かもしれないと思って、少し警戒していたんだ。
そうしたら、城下で君と三成を見つけた』
愛は、三成と反物を買いに行った時を思い出す。
「もしかして…その日の夜、後をつけてた?」
三成が急に刀に手をかけた時、誰かに付けられていると悟った。
『あぁ。途中でバレてしまったから退散したけど、
君たちが安土城への道とは違う道を行っていたから、
もう城にはいないと思って探ってたんだ』
佐助の洞察力には本当に頭が下がる思いだった。
そして、同時に安土城には忍び込んでいないと知ってホッとする。
「そうなの。色々あって、二ヶ月間は秀吉さんの御殿にいるんだ」
愛は、城下までの道すがら、前回佐助に会った後の出来事を説明した。
『へぇ!武将たちの晴れ着を愛さんが?
凄いじゃないか。もしかしたら、それが後世に残って有名なものになってるかもしれない』
(やっぱり、佐助君は喜んでくれるんだな。嬉しい)
「そんな…大袈裟だよ!」
愛は笑いながら佐助に言った。