第1章 ワームホールはすぐ側に(家康)
『酷いこと言ってごめん…。
もう、何処にも行かないで。ずっと俺の腕で抱かれていて。』
「家康…。」
『あと、これだけは忘れないで。
愛を慰められるのは、どんな時でも俺だけだから。
だから、もう他のやつの名前呼ばないで…。』
少し苦しそうな声で家康がそう言うと、
愛の頭を抑えていた腕が離れた。
すかさず、顔をあげた愛は、
苦しそうに眉間に皺を寄せる家康の顔を見上げて、
そして、両手で頬を挟み込むと、グッと自分の方に顔を向けさせて
家康の眉間に触れるだけのキスをした。
目を丸くして驚いている家康に、
「私には、家康しか見えてないから。
家康も、そんな顔、私以外には見せないでね。」
そう言うと、頬を挟んでいた手をそのまま猫っ毛の髪の毛に埋めていく。
『 愛…』
名前を呼ぶと、そのまま愛の唇に触れるだけの口付けを落とす。
「ん…」
家康の唇が離れると、愛は家康の目をじっと見つめる。
『どうしたの?』
「もっと…家康に触れたい…」
『…!!』
急激に体温が上がるのを感じつつ、
『覚悟しなよ…』
そう言うと、愛に口づけの雨を降らしていく。
さっきまで、降りしきっていた外の雨の代わりのように…。
第1章 終