第11章 忍びの庭 前編(佐助)
『愛様がいらして、ちょうど三月になることもありますし、
折角ですから、そう致しましょう!』
三成がニコニコとして言えば、
『うん。やはり今の愛の言葉を聞いて俺は決心した。
信長様は頑なに宴の時で良いと言っていたが、
やはり、信長様の誕生日の宴を開かなければ…』
秀吉は思案顔を深くし、三成を向く。
『三成、愛を宜しく頼むぞ。
俺は、直ぐに信長様に宴開催のご相談をする』
そう言うと、あっという間に踵を返し、どこかに行ってしまった。
「ねぇ、三成くん、信長様のお誕生日っていつだったの?」
三成は、不思議そうに愛の顔見ながら
『いつだった…と言われますと微妙ではございますが、
あと十日ほどですよ』
ニコニコと話す。
「え?!じゃあ、間に合うんじゃないの?」
『いえ…この安土の宴は、準備に最低ひと月ほどかかり、
織田家傘下の諸大名にまで伝達を出します故、十日では到底間に合いません。
ですので、愛様のお誕生日のおかげで、今年は余裕を持って準備ができます!』
「そ、そう…なんだ。
ていうか…そんな大それた宴、本当に私の誕生日でいいの?」
『はい。今の愛様のお話を伺って確信いたしました。
私が愛様と出会えずにいたらとは、最早思う事さえ出来ないのです。
愛様、生まれて来てくださり、私に出会ってくださり、
ありがとうございます。ですから、宴は盛大に成功させましょう!』
屈託無く笑う三成の言葉に、愛は胸の奥から何かが込み上げてくるのを
必死で堪えていた。
信長も、秀吉も、三成も、こんな自分の他愛のない想いを真剣に受け止めてくれた。
この時代に飛ばされた直後の出来事が、全て嘘のように今がある。
ふた月後、自分がどのような事になっているかは、まだ想像がつかないが、
今できることを精一杯やろう、精一杯楽しもう…
そう、強く心に決めた。
『さ、愛様。反物を見に行きましょう』
ふわりと優しい笑顔の三成に、愛も素直に笑える。
「うん。宜しくお願いします!」