第11章 忍びの庭 前編(佐助)
「下らなくなんかないですよ!」
愛の大きな声に、信長の動きが止まる。
『あ…すみません…
でも、下らなくなんかないです。生まれて来たから出会えるんです。
信長様がその日に生まれて来てくださったから、きっと私は今こうしてお話ができます。
信長様だけじゃないです。秀吉さんも、三成くんも…政宗も、光秀さんも、家康も、
その日に生まれていなかったら、一生関わる事が無かったかもしれないんですよ?』
一気にまくし立てる愛を、真顔で見つめていた信長だったが
喋り終えて一息ついている愛を見ると、口端をあげる。
『そうか。では、貴様の生まれた日とやらは、いつだ』
「え?私ですか?ええっと…あ、宴のちょうどひと月後です」
愛は、この時代の日にちの伝え方が咄嗟によくわからず、
ふた月足らずで訪れる自分の誕生日を大雑把に伝えた。
信長は、少し考えるような顔をしたと思うと、
面白そうに口元を綻ばし、
『そうか。ならば、宴の日にちは貴様の誕生日の日とする』
「えええ?!そんな勝手に変えたら、皆さん大変ですよ!」
『構わん。どうせ日付はまだ俺たちしか知らぬのだ。
城内の準備はまだはじまっておらん』
信長は一度言ったら考えを変えない…と三成がいつか教えてくれたのを思い出す。
「で、でもなんで私の誕生日なのですか?」
『貴様が俺の前に現れて、ちょうど三月。
城内外に知らしめるのも、ちょうどいい頃合いであろう』
その言葉に愛はハッとする。
(三月…三ヶ月…いやいや、駄目だよ。
私元の時代に帰るんだから…それまでに佐助君にも会わなきゃだし…)
「やっぱり、信長様の誕生月の方が宜しいかと…」
『しつこい。もう決定事項だ。秀吉を呼べ!』
〈はっ〉
廊下に控えていた従者が返事をし機敏に動く。
(あー。。困ったな…どうしよう…横暴だなぁ、ほんと…)
『貴様もこれであとふた月の猶予ができた。
更に良いものを仕上げろよ』
「はい…」
愛は力なく返事することしか出来なかった。