第11章 忍びの庭 前編(佐助)
『ほら、開けてみろ』
秀吉に言われて、愛は襖を開ける。
「わぁ!!」
そこには、使い切れないほどの色々な針子の道具が完璧に取り揃えられ、
いつまでも仕事をしていそうだと心配する割には、
他の部屋よりも多くの行灯も用意されている。
着物をかける衣桁も、色々な大きさが用意されていた。
それだけではなく、文机や、お茶の道具なども揃えられている。
「凄い!これ、本当に一人で使っていいの?!」
『勿論だ。お前、着物を作る時には、でざいん、てやつを紙に書いたりするんだろ?
筆も何種類か用意したが、足りなかったら言ってくれ』
「なんでデザイン案描くことしってるの?」
そんな話、いつしたっけ?と思いながら首を傾げる。
『三成が、お前の部屋に行った時に聞いたと言っていた。
見たこともない筆も持っていた、とな』
愛は、おにぎりを一緒に食べた日を思い出し、
確かに文机に置いていた色鉛筆を不思議そうに見ていた三成に説明した覚えがあった。
「三成くん、あんな前に話したこと覚えてくれてたんだ」
『あいつは、人を良く見ているからな。
特にお前の事となると、俺の知らない話ばかりで、たまに妬けるくらいだぞ?』
冗談めかして言った秀吉だが、本当に三成は知らない愛の姿を沢山知っている。
それを、包み隠さず話してくれるのは面白いが、自分が愛を疑っていた時から
仲良くしている三成には、密かに嫉妬のような感情を抱いていた。
「やだなぁ、秀吉さん。そうやってからかって…
秀吉さんくらいモテる人が嫉妬なんて、するわけないよー」
ニコニコと話す愛に、何とも言えない気持ちになる。
(お前はわからないかもしれんが…いや、やめておこう)
『ま、そう言うわけで此処が今日からお前の職場だ。
ウリにもすぐ会えるから、息抜きにもなるだろ?
たまに散歩に連れてってやってくれ』
「そうだね!あー今から楽しみだなー!
秀吉さんにも飛び切り似合うやつ頑張って作るからね!」
『おう。楽しみにしてるぞ』
愛は秀吉に優しく頭をなでられ、恥ずかしそうに笑顔を零した。