第11章 忍びの庭 前編(佐助)
「秀吉さん、本当に一人で帰れるよ?」
夕餉を終え、城に帰るという愛を、送る秀吉。
『だーめだ。こんな暗い道を、女一人に歩かせられるわけないだろ?』
愛は、観念したように
「ありがとう秀吉さん」
と、素直に甘える事にした。
「ウリと三成くん、大丈夫かな?」
いつも二人が揃えばウリは大暴れで三成が手を焼いていた。
『さすがに、今日はウリもぐっすり眠ってたし大丈夫だろ?
また、遊んでやってくれよ。お前のこと大好きみたいだからな』
そう言うと、愛の頭を優しく撫でた。
『ふぅ、これで膳の片付けは終わりましたね。
ウリも良く寝てますし、今のうちに秀吉様の部屋へ
移動さてしまいましょう』
三成は、花冠をつけたままぐっすり眠るウリを座布団ごと抱え上げる。
ウリは振動をものともせずに、寝返りを打って寝ていた。
そっと、秀吉の部屋のいつもの場所へウリを置くと、
『おや?これは何でしょう…』
寝返りを打つまで見えなかったウリの右手に、
何か引っかかっているものを見つける。
そっと爪から外してみると、それは何か布のようなものだった。
『これは…着物でしょうか。でも、ちょっと特殊なようですね…』
暫く考えを巡らせると、
『城に入れなければ、外、と言うことですか』
と、呟く。
三成は、ウリの手に引っかかっていた、深い緑色の布を懐に入れると、
険しい表情で秀吉の御殿を出た。
ある人に会うために。
(やはり、彼の方に相談するべき時が来ましたね。
今日は御殿にいらっしゃるでしょうか…)
昼間の喧騒を無くした安土の街を、足早に歩いていくのであった。