第11章 忍びの庭 前編(佐助)
『ウリもすっかり遊び疲れたようだな。ありがとな』
秀吉は、自分の寝床でスヤスヤと眠るウリを見て目を細める。
『可愛らしい花冠ですね。愛様が作られたのですか?』
三成も、続ける。
「うん。あのお花畑は凄く落ち着くんだ。
ウリも楽しそうに走り回ってたよ」
そう言いながらも愛は、佐助に会ったことも思い出し、
胸のざわつきを覚える。
『どうした?その割には浮かないかおしてるじゃないか』
秀吉が心配そうに愛を見る。
愛は慌てたようにかぶりを振る。
「な、何にもないよ。とっても楽しかったし、それに…」
『それに、どうかなさいましたか?』
三成は不思議そうに問いかける。
「ううん。家康とも、ちょっと仲良くなれたかな?って…」
秀吉と三成は少し驚いたように目を合わせる。
『まぁ、お前が楽しんでくれたなら良かった。
今日は助かったよ。冷めないうちに食べようか』
秀吉の促しに、愛は嬉しそうに首を縦にふる。
「なんだか、遊んでただけなのにご飯まですみません…。
いただきます!」
佐助の事が心配だが、あまり考えすぎるとすぐ顔に出てしまう。
今は目の前の夕餉に集中しよう…
愛は、秀吉ににっこり微笑むと夕餉を食べ始めた。
『みんなと食べると美味しいんですよ、秀吉様』
三成も嬉しそうに微笑む。
『おう。そうだな、愛がいつも一緒に食べてくれたら、
三成も飯を食うのを忘れなさそうだな。その寝間着があれば、
しっかり布団で寝るようにもなりそうだしな』
秀吉は兄のように顔をほころばせる。
『そうかもしれませんね!新しい発見です』
三成は感心したように言う。
(本当に、手のかかる妹と弟だ)
そう思いながらも、愛と三成の距離が近づけば近づくほど、
複雑な想いも芽生えていることに気づく。
(いつも愛を笑顔にしているのは、三成だもんな…)
二人のやりとりを、コロコロ笑いながら見ている愛を横目で見ながら
そう思う秀吉だったが、
本当に愛の顔を明るくさせている人をまだ秀吉は知る由もなかった。