第11章 忍びの庭 前編(佐助)
「大丈夫?怪我してない?」
漸く姿を見せた三成を引っ張るように起こす。
『愛様!おはようございます!
寝起き一番に逢えるなんて、私はついてますね』
自分の酷い状況をものともせず、
三成はエンジェルスマイルで挨拶をする。
トボけた展開に、愛はつい吹き出しそうにlなりながらも、
「いやいや…。大丈夫なの?何があったの?」
と、未だ下半身は埋まっている三成に訊く。
いつもなら三成を見て騒ぐウリも、愛の頭をギュッと抱えて見つめている。
『二日間ずっとここにいたのですが、うっかり寝てしまって…。
寝てる間に机を蹴ってしまって、積んであった本が全部落ちてきたようです』
物凄く冷静に言う三成が可笑しくて、つい笑ってしまう。
「ふふふ…三成くんらしいね。いっぱい寝れたの?」
『どうでしょう…もう陽も高かったので…
一刻経ってないかもしれませんね』
あっさりと笑顔で言う三成に半ば呆れてしまう。
「もう…忙しいのはわかるけど、身体も大切にしないと駄目だよ?
三成くんは、織田軍には無くてはならない優秀な参謀なんでしょ?
さ、ちょっと片付けよ。お団子持ってきたから」
愛と三成は、散らばった書物や書類を片付け、
漸く文机が顔を出したのは暫くしてからだった。
『すみません、愛様。
キュウリのお世話にいらっしゃったのに、余計なお手間を取らせて…』
書庫の端に繋がれたウリは不服そうに「キッキッ」と鳴いている。
「キュウリって…。秀吉さんに、ウリと三成くんを宜しくって言われてるから、
大丈夫だよ!お茶冷めちゃったから淹れなおしてくるね」
笑顔でそう言うと、愛は書庫を後にする。
『愛様は、本当に優しいお方ですね…。
ニガウリもそう思いますよね?』
「キーーー!」
名前を間違えられ、ウリは三成を威嚇するように鳴く。
『どうも懐かなくていけませんね…』
顔をしかめた三成は、ウリに触ろうとするが引っかかれてしまう。
『いたっ…』
三成がウリと戯れていると、愛が再び顔を出す。
「お待たせ。さ、ちょっと休憩して?
その方がきっと仕事にも集中出来るから」
優しい笑みで三成に甘味とお茶を差し出す。
『ありがとうございます。愛様も召し上がりますか?』