第11章 忍びの庭 前編(佐助)
『この通り、愛様は織田軍の皆様から必要とされていますよ』
三成がニッコリ笑う。
『ま、誰が必要としてようが、最後は俺が掻っ攫ってく。
それだけだ。きな粉餅作って来たから食え。ほら、三成も』
「あ、じゃぁお茶淹れるね!三成君はステイ!」
『『すてい?』』
「あ、ごめん。動かないでねってこと」
『はぁ…すみません…』
しょぼくれる三成とは対照的に、政宗は意味が解り大笑いをする。
『はははは!お前、鈍臭い愛にまで言われてるのかっ』
「ちょ…!鈍臭いって!その鈍臭い人に羽織任せてるの誰ですかねぇ?」
愛がフンとそっぽを向きながら言う。
『それはそれ、これはこれ。お前の腕はどの針子よりも確かだからな』
笑いながらも、愛をしっかり認めてくれる政宗の言葉が、
心の底から嬉しい。
(何処に居ても、人に喜んでもらえる服って作れるんだな)
愛は上機嫌でお茶を淹れる。
三成を意地悪い顔で慰める政宗。
二人のやり取りが素直に微笑ましい。
まるで、ここが乱世ということを忘れてしまうくらいの平和な時間。
「はいどうぞ」
三人分のお茶を淹れると、政宗のきな粉餅を囲む。
「わぁ!これ、めっちゃ美味しいね!甘さ控えめでもちもち〜!幸せ♡」
『だろ?ほら、三成も食え。美味いぞ』
三成も一口頬張る。
『どうだ?』
ドヤ顔で感想を待つ政宗だったが、
『はい。お餅です!あと…きな粉の味ですね』
その感想に愛は、危うくお茶を吹き出しそうになる。
「 あははっ!ちょっとやめてよ、三成くん!」
『どうされました?』
三成は何が面白いのかわからず、目を見開き愛を見る。
「だって…ふふふ…それ、味の感想じゃなくて、きな粉餅の説明じゃない!あはは」
『まぁ、三成にしては最大限頑張った感想だ。許してやれ』
政宗も半ば呆れ気味に笑う。
『あ、でも、愛様。みんなで食べてるので、美味しいですね!』
ニッコリ笑う三成に、
『その、みんなで食べないと不味いみたいな感想はやめろ!
これは一人で食べても美味いんだ!』
と、政宗が真剣な顔で三成に言う。
そのやり取りの間中、愛はおかし過ぎてお腹を抱えて笑っているのだった。