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イケメン戦国★センチメンタルLOVE

第11章  忍びの庭 前編(佐助)


愛の目にはうっすら涙が浮かんでいた。
その涙を零さないように堪え、佐助に応えるように大きく頷く。

『暫く会えないけど…、必ず迎えに来るから。
安心して、織田軍に守られてて』

「わかった。佐助君、気をつけてね。
戦…佐助君も行くんでしょ?」

『あぁ。でも、俺の上司も強いから。心配いらない』

(佐助君…上杉謙信のこと、信頼してるんだな)

心の中でそう思う。

『それじゃあ、愛さんも身体に気をつけて。あと…』

「なに?」

『…いや、何でもない。それじゃ俺はもう行くよ。
石田三成が来るから』

「え?」

愛が襖の方に顔を向けている一瞬の間に佐助は天井裏へ移動していた。
少しの隙間から、顔をのぞかせ、二本指を振って見せる。

慌てて湯呑みを片付けた頃、外から声がかかる。

『愛様、三成です。
お邪魔してもよろしいでしょうか』

(ぐ、偶然だよね?)

先ほどに佐助の言葉を思い出して、少し嫌な汗が出るが、
悟られないように冷静さを意識して、作りかけの羽織と針を手にする。

「どうぞ」

襖が開くと、いつもの笑顔の三成が顔を出す。

『お仕事中でしたか。お邪魔ですか?』

「ううん。ちょうど今やめようと思ってたところだから大丈夫だよ」

そう言うと、座布団を用意して微笑む。

「何かあったの?」

三成がやって来た理由を尋ねる。

『いえ…今日の軍議の際、戦が始まるという話が出た時に、
愛様が怖がられたような顔をなさったので…』

「心配してくれたんだ…。ごめんね?ありがとう」

(怖いのもあるんだけど…それよりも…)

不安そうな顔の愛に、三成は

『どうなさいました?』
と優しく尋ねる。

「戦で人が簡単に死ぬのを目の当たりにしたから…
死ななくても、大きな怪我したりとか…。
織田軍のみんなが無事で帰って来てくれたらいいな…って」

それは、軍議中にも思った本心だった。

こんなにいつも心配してくれる三成や、漸く疑いを晴らして世話を焼いてくれる秀吉。
信頼して羽織を任せてくれる政宗、文句言いながらも怪我をしたら治療してくれる家康。
意地悪ながらに気にしてくれる光秀、そして横暴だけど憎めない信長。

みんなみんな、無事でいて欲しい。

「本当は戦なんてして欲しくない…」
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