第1章 ワームホールはすぐ側に(家康)
「っーー!!」
家康にはスロモーションのようにフワリと降りてくる愛が見えた。
自分でもこんなに大きな声が出るのかと驚いた瞬間に
光とともに現れた愛は、目を奪うほどの美しさだった。
家康は我に帰り、慌てて愛を受け止めようと両腕を構える。
腕へ感触が降りた瞬間に閃光のように眩しかった光は消え
雨の降りしきる野原で、愛を抱きかかえていた。
「愛…」
今度は優しく呼んでみる。反応は無かったが、
その温もりが、意識を飛ばしているだけだとわかる。
愛を抱きかかえたまま、佐助と秀吉のところまで歩く。
漸く目が慣れた2人が目にしたのは、家康が優しく愛を抱きかかえる光景。
『ここは、どこだ?』
余りの出来事に、秀吉が頓珍漢な言葉を漏らしていた。
「何言ってるんですか。帰りますよ。
このままじゃ、全員風邪ひきます。」
『ゆ、夢か?』
呆気にとられた秀吉と佐助を横目に、
スタスタと歩いて行く家康は
(夢なんかじゃない。今こうして、愛の体温を感じているもの。)
と、心の中で呟いていた。