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イケメン戦国★センチメンタルLOVE

第11章  忍びの庭 前編(佐助)


夕刻、日も殆ど傾いた頃、
愛付きの女中が夕餉を知らせに来た。

『愛様、夕餉は広間で召し上がりますか?』

愛は午後のほとんどを泣きはらした顔を鏡で見ると、
申し訳なさそうに、

「すみません、ここで食べてもいいですか?」
と訊く。

その返事に、女中は快く返事をし、
部屋に膳を運んでくれた。

「ありがとうございます」
丁寧にお礼を言うと、女中はニッコリ微笑んで、

『何か、必要なものがあればいつでも言ってくださいね。
明日は、化粧でもしてみましょうか。少しは心が晴れますでしょう』

そう言うと、頭を下げて出て行った。

(ばれちゃったか…そりゃバレるよね…)

腫れぼったい瞼と、かみすぎた鼻の赤さに苦笑する。

(心配かけちゃったな…)



一人、部屋で夕餉を食べていると、頭上でカタカタと音がする。

「佐助君っ」

愛が天井を見れば、そこには一番逢いたいと思っていた顔が覗く。
音もなく畳にサッと降りてくれば、こめかみに二本指を当ててみせる。

『やぁ、愛さん。お食事中失礼』

「佐助君!越後に戻ってたんじゃないの?」

一週間以内には戻ると言っていたが、まだ二日だ。
思いの外、早く逢えた事に心が弾んだ。

『そうなんだけど、君が心配だったから…。
あまり間をあけると不安にさせると思ったんだ』

そう言うと、そっと愛の頬に触れ、

『でも、ちょっと遅かったみたいだな』

泣きはらした跡がまだ消えない顔に、佐助は顔を少し歪めた。

「ごめんね、泣いてもどうにもならないのにね…。
佐助君みたいに、ここで生きる術をなにか覚えないとね」

『生きる術というよりは、なにか打ち込めることがあればいいんだけど…。
あ、せっかく着物の時代に来たんだし、着物を縫うことはできないかな?
針子はどの城にもお抱えがいるはずだ』

その佐助の助言に、愛は顔を輝かす。

「そっか!服を作ってれば確かに気分は晴れると思う!
着物縫ったことないけど、本場で勉強できるなんてこんなチャンスないよね。
明日、信長様に頼んで見るよ。ありがとう、佐助君!」

『心配いらない。戦国ライフも、慣れば楽し…おっと』

膳をひっくり返す勢いで愛は急に佐助に抱きついた。
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