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イケメン戦国★センチメンタルLOVE

第11章  忍びの庭 前編(佐助)


あれから二日、佐助は宣言通り顔を出していない。
二日前、佐助に逢えたことで紛らわせた不安も、
安土にいない…それだけで愛の気持ちに影を落とした。

世話役の命を受けている手前、一日のうち少しだけは部屋から出る。
武将たちに文を届けたり、言伝をしたり。
でもそんな仕事は直ぐに終わってしまう。

一人になるとまた、本当に三ヶ月も乗り切れるのかと不安が襲った。

(佐助君…何してるのかな…)

ふと、佐助が置いて行った紙束と色鉛筆が目に入る。
手作りしたという色鉛筆をまじまじと見つめる。

パッと見は全て木の色をしているが、芯はカラフルで、
ところどころ歪なところが手作り感を出している。

(何でもできるんだな…)

色鉛筆をそっと取ると、紙に絵を描いてみる。
デザイナーを目指したのも、きっかけは昔から絵を描くのが好きだったから。
色々な服を想像して、自分ながらにデザインを描くのが好きだった。

(やっと叶ったのに…)

描いている手が止まる。
視界が涙で滲んでしまって、何も見えない。

「どうして…どうして…」

泣いたら負けだ。そう思えば思うほど、涙は次から次へ溢れ、
何もできない自分がちっぽけに見えて悔しかった。


『おい、愛いるか?』

ふいに外から声がする。

「秀吉…さん?」

『あぁ、入るぞ』

その声と共に襖が開き、振り返ると盆を持った秀吉と目が合った。

『暇だろ?お茶でも…おい、どうした?』

慌てて愛に近寄る秀吉に、
慌てて涙を拭って笑顔を作る愛。

「ごめ…なさい…」

『なんかあったのか?』

秀吉が優しく背中をさすってくれると、
また涙が溢れてきてしまう。

「何でもない…」

『何でもない事ないだろ?』

秀吉は愛が落ち着くまでそれ以上は聞かずにいてくれた。
漸く泣き止んでくると、秀吉は優しい声で

『今、お茶淹れてやるからな』

そう言うと俯く愛の頭をポンポンと触る。
秀吉は手際よくお茶を淹れると、持って来た茶菓子と一緒に愛の前に出した。

『ほら、甘いの食べると落ち着くぞ』

「うん…」

饅頭を一口食べれば、口に中に甘さと涙の塩っぱさが混じった。

『美味しいか?』

秀吉を見上げながら、泣きはらした目で頷くのが精一杯だった。
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