第11章 忍びの庭 前編(佐助)
二人で色々な話をしながらおにぎりを食べる。
三成は悪気なく、他の武将たちの話や癖を愛に教える。
きっと、本人が聞いたら怒るような事も、
三成が話せば全て、ほんわかするような気持ちにさせた。
真面目な顔をして話している三成のほっぺたには、
どう言う食べ方をしたらそこに付くのか、
ご飯粒がぽつっとついていた。
「ぷっ…」
『どうされました?』
愛は、キョトンとする三成のご飯粒を取ると、
「お弁当ついてるよ?」
と、そのまま自分の口に運ぶ。
『あ…愛様…』
顔を赤く染める三成につられて、愛まで恥ずかしくなる。
「お、お茶淹れるね」
と、愛が立ち上がろうとする。
『いえ、愛様、お裾分け頂いたのですから、
私が淹れましょう』
そう言うと、お茶の準備をするが、茶葉をこれでもかと詰め込んでいる。
「み、三成くんそれにお湯入れたら…」
愛の予想通り、盛大に茶葉を溢れさせ、三成は慌てふためいている。
『すみません、愛様のお部屋を…熱っ!』
「あははは!やだー、三成くん、滅茶苦茶不器用なんだね。意外だな。うふふ」
笑いながらも、手際よく畳を拭き、三成の着物も拭いていく。
『ご迷惑ばかり…すみません…』
しょぼくれてしまった三成に、
「お茶は私が淹れるよ?三成くんは待っててね」
と、優しく言う。
「はい、どうぞ」
愛はお茶を淹れて三成に渡す。
『ありがとうございます』
申し訳なさそうにお茶を受け取る三成。
「そんなに落ち込まないで?
私は、三成くんには何でも話しやすいし、
こうやって一緒にいてくれるだけで嬉しいんだから」
三成はその言葉にパッと顔が輝く。
『それは良かったです。
こうして愛様の笑顔が見られると、私もとっても嬉しいです。
秀吉様が本当に心配してらしたので…』
「そうだよね、正直な事言うと、秀吉さんの話、
あんまり覚えてないかも…明日謝らないと」
『そうですね。でも、秀吉様も安心されたと思いますよ』
ニコニコとそう言う三成に、愛は首を傾げ、
襖の外ではギクっとする影がいたのだった。