第10章 たんぽぽ(政宗)
「ちょっと、照月、くすぐったいよ!」
縁側に座る愛に照月がじゃれついている。
『おい、照月。褥を許してやったんだ。
少しは遠慮しろよ?』
政宗の言葉に愛キョトンとする。
朝、愛が目覚める頃には、もう照月は布団を抜け出していて、
政宗にしっかり抱きすくめられていただけだ。
「褥って?照月いたの?」
『何でもないよ』
明け方に嫉妬していた自分を思い出し、クスリと笑いながら言う。
縁側でじゃれついていた照月は、急に庭に降りると
ある一箇所に突進して行った。
「ん?何かあった?」
愛も庭に降りて、照月のじゃれている場所を覗き込むと、
そこには可愛らしい黄色いタンポポと、綿毛になったタンポポが咲いている。
「わぁ、ここにもタンポポってあるんだね。
ねぇ、政宗、綿毛だよ?あ、照月、いっぱい付いちゃってるじゃない…」
子供のようにはしゃぐ愛と、照月を見ていると、
ほわっと心が温かくなる。
「政宗もこっちおいでよ!風が気持ちいいよ?
春色のタンポポは、幸せな気分になるね、照月?」
満面の笑みで政宗を呼ぶ愛の顔を見る。
あんな小さな花ではしゃいでいるが、
お前の方がよっぽど、俺に春を連れて来てるんだよ…
寒い冬の朝も、長く暗い夜闇でも、戦さ場でさえ負ける気がしねぇ。
お前がいればいつも暖かい。ずっと側にいろよ。
第十章 終