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イケメン戦国★センチメンタルLOVE

第10章 たんぽぽ(政宗)


「ちょっと時間かかっちゃったな…早く戻らないと…」

その日の夕刻、政宗は台所でささやかな宴の準備をし、
愛は、プレゼントの晴れ着を包むための
可愛らしい巾着を縫っていた。



最初に迷った桃色の反物で作った大きめの巾着には、
丁寧に、黄色の刺繍で〈春菜〉と名を入れた。

出来上がった袋に、丁寧に晴れ着を入れ、
政宗の所へと急ぐ。

(まだ台所かな?)

小さな宴のための準備に政宗が張り切っているはずだ。

(あれ?)

台所に向かう途中の政宗の政務部屋から、
男の話し声が聞こえた。


(政宗の声だ!)

襖越しから声をかけようと、膝をついたとき、
中から大きめの衣摺れの音と共に、

『政宗様、大変申し訳ございませんでしたっ!』

と、大きな声がした。

(あれ?この声…)

夕餉に招待した主役の、謝罪の言葉が響いている。
すっかり声をかけるタイミングを失って、
愛はそのまま、固唾を飲んだ。

(何しちゃったんだろう…)

「何の話だ?」

想像とは違う、とっても穏やかな政宗の声が響く。

『政宗様が…昨日お怪我をなさったと…』

「…っ!何で知ってるんだ?
家康と愛しか知らないはずだが…」

自らの不注意で追った傷を、大ごとにするなと、
家康と愛には念を押した。

(あいつらが話すわけないが…)

『昨日休みだった見張りの仲間が、安土城の門先で
血を流されてる政宗様が家康様と話されているのを見たと…』

苦しそうな顔で政宗を見ると、
再び頭を畳につける。

「おい、やめろ。
だいたい、なんでお前が謝るんだよ。
別に敵襲でもねぇし、俺が勝手につけた傷だ」

(そうだよね?政宗そう言ってたもんね…
なんで謝ってるんだろう…)

『いえ…。きっと政宗様は、周りが見えない程急いで帰られたのでしょう?
見張り小屋で、私があんな話をしなければ、政宗様が怪我をなさることも…』

愛は、一体何の話をしたら政宗が早駆けまでして帰ってくるのかが
気になってしかたない。

「はははは…お前、それは違うな。
俺はいつだって、愛に逢いたいし触れたい。
別に、お前の話を聞いてなくても、同じような結果だったろうよ」

政宗は家臣の話を盛大に笑い飛ばす。

『しかし…』

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