第10章 たんぽぽ(政宗)
「出来た!!」
《ガタンっ》
御殿で書簡の整理をする政宗の隣で、子供用の晴れ着を作っていた愛が
突然嬉しそうな声をあげた。
驚いた政宗は持っていた文箱をひっくり返す。
『おいっ、びっくりさせるなよ…
半日以上俺をほっといて黙ってたくせに』
「え?ご、ごめんっ。でも政宗も仕事してたから…」
『お前、まさか…』
「え?」
『お前の後ろ見ろ』
言われるままに振り返れば、そこにはお茶や菓子に団子が並べられている。
「えっ?」
『よくも子供もいないのに無視してくれたな』
政宗が笑いながら言う。
「ごめんね…集中してて、全然気づかなかった…」
『まぁ、空返事は返ってきてたけどな』
「…… 」
『覚えてないのか?』
政宗が呆れたように言うと
愛は、気まづそうに頷く。
『おいおい…先が思いやられるな。
お茶入れ直すから、ゆっくりしろ』
「あ、私やるよっ!」
『いいからっ。そこに座っとけ』
政宗はそう言うと手早くお茶の支度をする。
(政宗って、五百年後だったら珍しいくらい良い旦那さんになりそう)
『なーに、ニヤついてるんだよ。ほら、お疲れ様』
そう言うと、二人分のお茶を置く。
「政宗もお疲れ様。お団子硬くなっちゃったかな…ごめんね」
『大丈夫だ。こうなりそうだったから、
硬くならないように作った』
「え?いつの間に作ったの?!」
『ぷっ…それすら気づかないとはな。はははっ!
でも愛の集中力は凄いな。
お前の仕事姿、滅多に見れないから面白かったぞ』
堪えきれず政宗は声を出して笑う。
「面白いってなによ…」
愛は頬を膨らませて拗ねる。
『お前、集中すると心の声だだ漏れな。
ここはこうでしょ?とか、あっあれにしよう!とか、
ずっと言ってたぞ』
思い出してまた可笑しくなり、政宗が笑い続ける。
「う、うそっ。じゃあ針子部屋でも…かな…」
愛顔を真っ赤にして焦っている。
『どうだろうな?
でも、もしそうなら今頃噂になってそうなくらいだったけどな…くくっ』
「もぉ…お団子食べよ…」
パクッと一口団子を放り込むと、愛の顔はパァッと輝く。
「凄いっ!これどうやって作ったの?柔らかくて美味しいー!」