第10章 たんぽぽ(政宗)
(政宗には、やっぱり敵わないな…)
「もし、政宗との子供が出来たら、
政宗に似て意地悪でも、私の持ってる愛情全部、いーっぱいあげるんだ…」
言葉にした瞬間に涙が溢れる。
予想をしてなかった愛の言葉に驚く政宗。
そして、少し顔をしかめる。
『駄目だ』
「えっ?」
今度は愛が目を見開く。
「なんで…」
(やっぱり、この時代ではそれじゃ駄目なの…?)
悲しくて、やりきれない思いが愛を埋め尽くす。
『勘違いするな。今のうちにはっきり言っておく』
(聞きたくないっ)
いたたまれず、愛は政宗から身体ごと顔を背ける。
(どうして…)
声を押し殺して涙を堪えていると、背中から抱きしめられる。
「えっ」
『子供に全部愛情をやったら、俺のぶんが無くなるだろ』
「へっ?」
『いいからこっち向け』
言われて、おずおずと身体を向けると、触れる程の近さに政宗の顔があった。
その顔は、まるで駄々っ子のような不貞腐れた顔。
『お前の愛情はまずは俺のもんだ。
子供が何人産まれようが、お前からの愛情は俺が一番もらう』
そう言うと、少し乱暴に愛の唇に噛み付くように口付けをする。
「んっ…あ…まさ…むね…んんっ」
無理やり捻じ込まれた舌先が、焦るように愛の吐息まで全てを絡め取っていく。
「ちょ…んっ…はぁ…」
はしたない水音を立てて、漸く政宗から解放された唇は、
酸素を求めて大きく息を吸う。
「もう…」
『わかったか?わかるまで終わらないぞ』
「わ、わかったから…。でもそれじゃ…」
『全部…とは言わねぇ…その代わり…
足りない分は、俺が十分すぎるくらい注いでやる。
お前と違って、俺の愛情は愛に注ぎ込み過ぎても
次から次へと湧いてくるからな』
そう言うと、口端をあげて笑う。
「政宗…」
『おい、なんで泣くんだよ』
「政宗、大好き!」
そう言うと、今度は愛から触れるだけの口付けをする。
『今のは…お前が悪いからな』
そう言うと、愛の上に覆いかぶさるように政宗が身体を動かす。
「ちょっと…政宗、腕…」
『大丈夫だ。俺はそんなにやわじゃねぇ』
そう言うと、口付けの嵐が愛に降り注ぎ、
そのまま甘く蕩かされいった。