第10章 たんぽぽ(政宗)
笑顔で忠告をしてくれる家臣の言葉に、政宗は愛を思った。
(たしかに、あいつは何にでも一生懸命だから
子供ができたら、頑張り過ぎそうだな。
乳母をつけさせるたちでも無さそうだしな)
そう思ったら、一瞬がとても尊いものに思え、
(愛に逢いたくなったな…
この後は何もないし、早く帰って甘やかすか)
なぜか、子供を抱きあやす愛を想像すると、
今の二人の時間がより大切に思えて、気持ちが早った。
「そうだな。確かに母になると女は強くなる。
父親がしてやれることは限られるが、
でも、やっぱり家族は多い方がいいと思うぞ。
お前は家族を笑顔にすることだけを考えて仕事しろよ」
家臣左ノ吉の肩をポンと叩き、
「ありがとな。では、任せたぞ」
と、見張り小屋を後にした。
帰りの馬上で、はやる気持ちを抑えきれなくなった政宗は、
(少しでも早くあいつの笑顔が見たい)
そう思い近道のために森を抜ける事にしたのだった。
政宗の腕の中でぴったりと身体を寄せ眠る愛を見る。
(甘やかすはずが、心配かけちまったな…)
すやすやと気持ちよさそうに寝息を立てる愛の髪を
政宗は優しく撫でる。
すると眠っているはずなのに愛の顔は気持ちよさそうになる。
「ぷっ…。呑気な寝顔だな」
政宗は、愛の温もりを感じながら穏やかな眠りに落ちていった。