第9章 アイ(家康)
本当に焦った声を出した家康に驚きながらも、
愛の胸は愛しさでいっぱいだった。
「時を超えて、家康に出逢えて良かった…
こんなに幸せで、怖いくらいだよ。ありがとう」
愛が家康に笑いかける。
『愛、隣にいてくれてありがとう』
愛は何か言葉にすれば泣いてしまいそうで、
ただ、「うん」とうなづく。
今日の幸せが、乱世ではいつどうなるかの保証はない。
けれど、天邪鬼で、時に素直で、優しくて、強くて、
時々意地悪な、最愛の人が、
いつまでも幸せでいてくれる事を愛は願わずにはいられなかった。
そっときな粉餅を差し入れしていた政宗は、
縁側で仲良く笑い合いながら、
ささやかな花見の宴をしている二人を離れた場所から確認すると、
『ったく…。人騒がせなやつだな、相変わらず。
愛に家康の寝言を聞かせてやりたかったな…くくくっ』
そう呟くと、面白そうに思い出し笑いをしながら、
家康の御殿を後にした。
(政宗さん、あんたには心配かけましたね。
本当にありがとうございました)
第9章 終