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イケメン戦国★センチメンタルLOVE

第9章 アイ(家康)


『二人きりには、ならないのではなかったか?』

謙信は、自ら近寄ってきて酌をすると言った愛に、
杯を差し出しながら問う。

「二人きりじゃないですよ?こんな近くにみんないるじゃないですか」
そう言って、微笑みかける。

謙信は、愛の顔から目が離せず注がれた酒に
口を付けられずにいた。

「どうかなさったんですか?」

動きを止めた謙信を不思議そうに愛の目が覗く。

『愛、このままずっと春日山にいたらどうだ…』
そう言うと、杯を持っていない方の手で、愛の髪に触れようとしたその時…

《失礼致します。石田様、徳川様より早馬にて文が届いております》

「早馬…まさか…」

その場に緊張が走る。
三成は、文を取り次いだ謙信の家臣に礼を言うと、
早馬を飛ばしてきた家康の家臣の側に寄る。

三成は声を潜め、

「何かあったのですか?」
と、聞いた。

『いえ、実は…この文は愛様に渡すようにと…』
それを聞いた三成は驚きを隠せない。

「家康様たちに、何かあったわけではないのですね?」

『はい。諍いの噂は全くの出たら目。
故に、家康様、政宗様は、既に安土に帰城するために出立しております』

三成はそれを聞き、ホッと胸を撫で下ろす。
何にせよ、愛が悲しむ事になるのは避けたかったからだ。

ふと、愛を見ると、不安そうな顔でこちらを見ている。
何かあれば早馬で伝達が来ると伝えていた事を思い出し、
三成は文を受け取ると、笑顔で愛の元へ進む。


「三成くん…」
今にも泣き出しそうな愛に、
三成は丁寧に文を渡す。

「家康様から、愛様に文が届いておりますよ」
春日山に入ってから、一番の笑顔で三成が言う。

「えっ?私?家康になんかあったんじゃ…」
文を受け取りながら言う愛に、三成は

「家康様は帰城の最中だそうです。
どうぞ、そちらをお読み下さいね」

そう言うと、謙信に向かい
「今しがたこの文を届けてくれた、徳川の家臣にも
この宴に参加させて頂きたいのですが、宜しいでしょうか」

と、許しを請う。

『かまわん。勝手にしろ』
とつまらなそうに声がすると、

家康からの個人的な文を届けるために馬を飛ばしてきた家臣へ、
労いの言葉をかけた。
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