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イケメン戦国★センチメンタルLOVE

第9章 アイ(家康)


二日後、愛と三成が出立の日、
政宗と家康も同じく安土を立つことになった。

「家康、気をつけてね」

家康の着物の襟を正しながら愛が言う。

『気をつけるのは、愛の方でしょ?
癪だけど、三成のいう事ちゃんと聞いてよ』

三成という名前を出す事すら嫌そうに言う家康に、

「大丈夫。私は温泉行くだけだし。光秀さんもいるしね」
そう微笑み返す。

『あと…謙信と二人きりには絶対にならないで』

苦虫を噛み潰したような顔で家康が声を絞り出す。
謙信があの日言った言葉を忘れた事はない。

《必ず攫いに行く》

あの女嫌いの上杉謙信が興味を持っている唯一の女が愛だろう。
そんな男の元へやすやすと愛を向かわすのがどうしても気がかりだった。

「大丈夫。佐助君もいるし!
家康の代わりに守ってくれるよ。
佐助君は家康の大ファンだしね」

『大ふぁんね…。あんた、佐助に会えて嬉しそうだね。
それ、佐助に渡す荷物でしょ?』

つまらなそうな顔で指差す先には、愛が佐助のために作った何かがあった。

「佐助君は、幼馴染だよ。家康が心配する事なんて何にもないよ。
私が大好きなのは、家康だけ。謙信様でも、佐助君でもない。
私の事、信じてくれる?」

少し不安そうに家康の顔を覗き込む。

『見えないもの、信じるのって…慣れてない』
そう言うと目を反らす。

本当は当たり前に愛の事を信じていて、
自分の事を一番信じてくれている事もわかっている。

(今日は素直でいようって思ってたのに…難しいな…)

『はぁ…』
また天邪鬼な自分が出た事に嫌になって溜息が出た。

「そっか…。仕方ないよね…」

家康は愛の声がしてハッとする。

(まずい…この流れは…)

『愛様、ご用意できましたか?お迎えに上がりました』
間が悪く、三成の声が襖の外から聞こえる。

家康に背を向けている愛は、涙を拭ったように見えた。

(愛…泣いてる?)

「大丈夫だよ!準備できてる」
そう言うと襖を開ける。

(気のせい…じゃないよね…)

『おはようございます。愛様、家康様』
朝からまぶしいエンジェルスマイルを振りまく。

『こちらが愛様のお荷物ですか?お持ちしますね』


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