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イケメン戦国★センチメンタルLOVE

第9章 アイ(家康)


愛が信長に話してこようと立ち上がりかけた時、
思いがけず近くで信長が家康を呼ぶ。

『家康、貴様どこか具合が悪いのか』

三成が先に信長の耳に入れていたようで、
信長が直々に様子を見に来ていた。

「いえ。三成と愛が早とちりしているだけですよ。
俺はどこも悪くない…」

家康は面倒くさそうに答える。

『信長様、こいつは身体は悪くないですけど、
ちょっと心を病んでるだけですよ』

笑いながら言う政宗の言葉に全てを察知した信長は、
笑みを携えた口元で、

『貴様、そんなことで務まるのか?
もう今日はいい。愛と先に引っ込め』

そう言うと、愉快そうに笑いながら元の席に向かっていった。

「あんたたち、いい加減に…」

いい加減しろ。そう言おうと顔をあげると、
そこには、不安でいっぱいという愛の顔が目に入る。
両手はギュッと膝の上で握られて、今にも泣き出しそうな顔。

「愛、行くよ」

そう言うと、握られた手をそっと掴んで立ち上がらせる。
驚いた愛だったが、すぐに立ち上がり
家康に遅れないように着いて行く。

『愛、家康をたのむぞ』
政宗は声をかけると、その場を離れ、
秀吉たちの輪に加わりに去っていった。

家康と愛が広間を出ると、
三成は心配そうに

「家康様は大丈夫でしょうか…」
と呟く。

『どうやら、今のあいつは愛しか治せないみたいだからな』
秀吉が顔を綻ばせたまま言う。

信長と政宗は笑っているが、三成にはまだ意味がわからないままだった。




「まって、家康」

広間を出て、愛の手を掴んだまま、
ずんずん進んでいく家康に声をかける。

何も言わない家康に、不安になった愛は

「怒ってる…の?」
と、こわごわ訊く。

家康は一切振り返らずに言う。
『怒ってなんかない…』

そう言うと、ただ掴んでいただけの手を
家康はしっかりと指を絡め、つなぎ直す。

確かに声は怒っていないようで、
繋がれた手も優しい。

それでも、家康の御殿に着くまで、
二人はそれ以上の言葉を交わすことはなかった。

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