第8章 私が髪を切る理由(幸村)
『幸の言ってることは間違いないと思う。
見た目がこんなだから、寄ってくる女性は多いみたいだけど、
幸は本当に愛さん以外の女性に全く興味がないみたいだから』
佐助は珍しく口元を綻ばせて、幸村をからかうように言った。
「佐助っ…うるせー…」
頬を赤く染めた幸村が呟く。
『もう、誤解は解けたか?愛。
幸村。例え愛の勘違いだったとしても、
お前が勘違いされるのも悪い。
泣かせるようなことがあったら、ただじゃおかないぞ』
秀吉は説教というよりは、世話焼きの顔で幸村に言う。
「ご、ごめんなさい…。私もちゃんと事情聞かなくて…」
「いや。秀吉さんの言う通りだ、俺がちゃんと説明しなかったのも悪い。
悪かったな…愛」
照れながらも幸村が謝り、皆んなを見れば
何故かポカンとした顔で自分を見ていた。
「な、なんだよ…」
バツの悪そうな幸村に、愛は、
「今、秀吉 さん て…」
「はぁ?呼び方なんてどうでもいいだろっ!
花見始めねーのかよ」
『ははっ。そうだな。折角準備してもらったんだ。
愛、いっぱい食えよ。
ここは、人も滅多にこないから、ゆっくりできる』
そう眼を細める秀吉に、にっこり微笑んだ愛は、
「改めてすごいね、ここ!
とっても、懐かしい気分になる」
『愛さん、あそこを思い出さない?
僕らの秘密基地だった桜の木を』
佐助が遠くを見るように言う。
「私もそう思ってた。この桜の木の大きさとか、
低いところまで花が沢山さいてるところとか…
こうして、みんなでお弁当作ってお花見したもんね、小さい頃」
『俺たちは、大学に入っても三人でやってたよ。
あの場所でお花見』
佐助の言葉に驚く愛が、
「ずるーい!なんで誘ってくれなかったの?!」
と、少しふくれっ面を作る。
愛と佐助のやり取りを、
秀吉は微笑ましくもあり、羨ましくもありながら眺める。
幸村は少し面白くなさそうに、黙々と重をつつく。
「みんな、ありがとうね。
また、こうやって大好きな人に囲まれてお花見出来るなんて思わなかったから。
秀吉さんも、幸村も、本当はこんなことしちゃダメでしょ?
でも、なんか、私勝手にこの関係ずっと続くんじゃないかって思っちゃう。
おかしいよね」