第8章 私が髪を切る理由(幸村)
秀吉は、自分に話してくれた事を、幸村に包み隠さず話した。
全て話し終えた頃、庭から声がかかる。
『その話の補足なら、俺がしましょうか。
まぁ、今秀吉さんが話した事が殆どですけどね』
いつの間にか現れた佐助が言う。
「お前!どうやって此処がわかった?!」
秀吉が目を丸くする。
『すみません。職業が忍びなもので…』
「佐助…どうせ俺の後をついてきてたんだろ」
佐助のとぼけた返事に幸村が呆れ気味で言う。
『そうとも言う。忍なので』
「まぁわかった…お前も入れ」
秀吉は、佐助も部屋に上げ、手際よくお茶を追加した。
『秀吉さんに淹れてもらうお茶が飲める日が来るとは…感無量です』
無表情に見える表情と、言葉の温度差に秀吉が少し面喰らう。
「悪いな。こいつはこういう奴なんだ。
あんまり気にしないでやってくれ…」
幸村が言う。
「で、お前はさっきの話に何を補足する?」
秀吉が本題に戻す。
『そうでしたね』
お茶を堪能していた佐助は我に帰る。
『お前、愛と幼馴染なんだろ。どこまで知ってる』
秀吉にとってはそれすら新たな事実を突然言われ驚く。
「幼馴染だと?いくつからだ」
目を丸くした秀吉に聞かれた佐助は、常に淡々と答える。
『俺たちは物心着く頃からずっと一緒にいますよ。
幼稚園から高校までずっと一緒ですからね』
「ようちえん?こうこう?
また佐助語が出たな…」
幸村が訝しげな顔をする。
『ようするに、小さな頃から大人になるまで、
殆どの時間を同じ場所で過ごしてるって事だ』
サラッと纏めた回答をすると、幸村も秀吉も、
揃って面白くなさそうな顔をした。
「ほぉ。じゃあ、俺たちより愛の事をよく知っていると?」
表情を崩さず佐助に訊く秀吉を察し、
『事実確認は出来るってことです』
そう答えた。
「愛に好きな奴がいたって、本当かよ…」
幸村が、一番気になったことを訊いた。
『あぁ。それは事実だ。
結婚式の直前で亡くなった』
「けっこんしき?」
秀吉が聞きなれない言葉を質問すると
『結婚式とは、祝言のことです』
あっさり佐助は答え、幸村が声にならない声を出す。
「なっ…」
「愛は、祝言をあげる直前に、好きなやつと兄を喪ったというのか?」