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イケメン戦国★センチメンタルLOVE

第8章 私が髪を切る理由(幸村)


「そしたら…。
彼だけじゃなくて、お兄ちゃんも私の前に現れてくれなくなっちゃったよ…」

そこまで言うと、愛は秀吉の顔を見て、一生懸命微笑みを作ろうとする。

『お前…』

その顔を見て、なんと声をかけていいか迷っていると、

「ね。私酷い妹でしょ。
本当は、秀吉さんにも、幸村にも、こんなに愛される資格なんてないんだ…」

そう言うと、表情を変えないまま、ポロポロと止めどなく涙を流す。

『そんなことないぞ。愛は酷くなんかない。
酷い奴だったら、それを思い返して、こんなに心を痛めないし、
涙の一つも流しやしないはずだ』

「でも…」

何かを言おうとする愛に、秀吉は優しい目を向ける。

『もし俺がお前の本当の兄なら、こう思う。
〈こんなに苦しませてごめん〉ってな』

そういう秀吉は自分の事のように苦しそうな顔をする。

『そんなに甘やかしてきた妹が、
自分のために今でも涙を流していることを知ったら
死んでも悔いが残る』

『それは、兄だけじゃないだろう。
俺が愛のことを愛し、愛されていた相手なら
俺がいなくなった事で自分を責め続けるお前に、
〈違うんだ〉って言えないもどかしさに、気が狂う思いだろう』

「秀吉さん…」

『俺が思うんだから間違いない。
お前はとっても優しい、日ノ本一の妹だよ』

そう言うと、横から抱きしめ、自分の胸に愛の顔を埋めさせる。

『俺が似ていると愛が感じるなら、
きっとそれは、お前の兄さんが愛に伝えたかったんだ。
きっと、俺と同じ事を思っているんだって事をな』

秀吉にそう言われた愛は、胸の中でまた、
しゃくりあげるように泣き始める。

泣き続ける愛の頭をポンポンと優しい手つきで
撫で続ける。

『気がすむまで泣けばいい。
お前の気がすむまでここに居るからな』

そう言うと、愛が泣き止むまでそのままでいた。
愛の頭を撫で続けながら、色々な事を思う。

愛が、兄と慕ってくれるなら、自分の気持ちに蓋をしてでも
自分は兄に徹しよう。

幸村と愛し合っているのなら、出来る限りは支えてやりたい。
だが、相手はいつか主君の信長を討とうと狙っている敵だ。
もし戦になれば、この心優しい娘はどんなに傷つくのだろうか…
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