第1章 ワームホールはすぐ側に(家康)
昨夜から降り出した雨は、
夜が明けても止む気配はなかった。
どんよりと曇った空は、
家康の心をそのまま写しだしてる様だった。
(ちゃんと謝らないと…)
余り眠れなかった目を擦りながら、
少し早めに城へ向かう。
(朝一番に謝ろう。)
そう決めていた。
だって、今日は、《わーむほーる》なる物が
愛をさらっていってしまうかもしれない日。
それを阻止するためには、
(早く仲直りして、側にいないと…。)
足早に城につくと、前からは一番会いたくない人物が。
『家康様、お帰りになられたのですね!』
(三成…)
「あぁ…」
素っ気なく返事をすると、
『あ、愛様はグッスリお眠りになられたみたいですよ(ニコっ』
と、三成からは聞きたくない名前が出てきた。
「なんで、あんたが知ってんのさ。」
不機嫌に質問をする。
『昨日、秀吉様から
愛様がお呼びになったらすぐに行くように、
と、仰せつかっておりましたが、
朝まで一度も呼ばれませんでした!』
(そんなの呼ぶわけないでしょ…)
「あっそ…。
じゃあ愛の所行ってくるから。」
『愛様は、まだおやすみになられてるようですよ。
さっき私も心配で覗きに言ったのですが、
女中に寝てるからと止められました…』
三成が少しさみしそうな顔をする。
「三成が行く必要ない。
あんたはさっさと秀吉さんとこ行きなよ。」
『ありがとうございます!
ではお言葉に甘えて。
愛さんを宜しくお願いしますね(ニコっ』
なぜ三成に宜しくと言われなきゃいけないのか…
と、若干の腹立たしさの中、
夜中に何もなかった事に安心もした。
佐助が居ただろうから、
何かあれば家康の耳にはすぐ入っただろう。
それでも、朝起きたらもう愛がいないのでは…
という恐怖に襲われていたのは間違いなかった。