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イケメン戦国★センチメンタルLOVE

第8章 私が髪を切る理由(幸村)


「秀吉さん」

もうすぐ城に着くという辺りで、愛に掠れた声で名前を呼ばれた秀吉。

『どうした?』
と、愛の顔を覗き込むと、何故かその目には薄っすら涙が浮かんでいる。

『どうしたんだ?!そんなにあいつと離れたくなかったのか?』
急なことに戸惑っていると、愛が秀吉の腕をぎゅっと掴んでくる。

「私の側にいつもいてくれて…ありがとう…。
幸村の事も、本当はいけない事だよね。秀吉さんの立場からしたら…」

(おいおい…そんな不意打ちで可愛いこと言われたら…
兄のままで居られなくなるぞ…)

困った顔をして秀吉は愛の頭を撫でる。

『急に何を言い出すかと思えば…。
そんなの当たり前だろ…。
敵陣に可愛い妹が取られる日が来ると思うと…
考えるだけでゾッとする』

愛の目から遂に一粒ポロっと雫が落ちる。

「ごめんな…さい。私…やっぱり…悪い妹なんだ」

何か何時もと様子が違う愛に戸惑う秀吉。
自分の事をはっきりと妹と言う愛に違和感を感じる。

『お前、前に〈本当のお兄ちゃんみたい〉って言ったな…。
愛のいた時代に、お兄さんがいたのか?』

なんでも相談したり、話したりしてくれる愛が
唯一話さなかったのは、自分のいた時代の家族の事。
秀吉も、聞いてはいけない気がしていて今まで触れてこなかった。

秀吉の質問に、今ではしゃくり上げるほど泣いている愛は、
ただ、「うん」と大きく首を縦に振った。

『俺に似てるかな?』

愛を和ませようと、少しおどけて言ってみるが、
どうやらそれは逆効果だったようで、愛は余計に涙を流す。

『おいおい、どうした?泣いてるだけじゃわからないだろう。
とりあえず、城内に入るぞ?みんな心配してるからな。
お前は一回部屋に行ってろ。報告して直ぐに愛の部屋に行くから。な?』

しゃくりあげたまま、再び「うん」と首を振る。

広間に出向いた秀吉は、愛を連れ帰った事を皆に伝える。
話があるからという理由で、夕餉の膳を二人分部屋に回させて、
愛の部屋へと急いだ。
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