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イケメン戦国★センチメンタルLOVE

第8章 私が髪を切る理由(幸村)


「いい反物が見つかって良かったなって言ってくれたの」

〈良かったな〉

確かに秀吉はそう言って愛荷物を持っていた。


『秀吉は、俺と愛の事を認めてるって言うのかよ』
怪訝そうに幸村が訊く。

愛は、少し困った顔で
「本当はわからない。でも、こうやって真実を伝えた上で、
お城から出してくれてるの。秀吉さん以外には言ってないけど…」

そんな話をしていると、前から誰かが近づいてくるのが目に入る。

「秀吉さん…?」

見慣れた着物に、遠目からも愛は誰かが分かった。

『愛を迎えに来たのか?』

「そうかもね…さっき佐助くんも言ってたしね」

二人だけの時間の終わりが近づいた事に気づき、
繋いだ手にお互い力を込める。

二人が秀吉の顔をしっかり認識できるくらい近づくと、

「こら、愛。約束の時間はとっくに過ぎてるぞ!
みんなが心配してる。約束は守れ」

開口一番、説教をする。

「ごめんなさい…」

申し訳なさそうに愛が謝る。

『悪かったな…。愛は悪くない。俺のせいだ』

幸村が不服そうな顔で秀吉に謝る。
秀吉は、一瞬険しい顔をするが、ふっと表情を緩め、

「愛の着物はいい出来だっただろう?」
と幸村に声をかけた。

愛も幸村も目を丸くして驚き、顔を見合わせる。

「どうした。その為の日だったんだろ。
何かおかしい事いったか?」

秀吉は再び険しい顔つきになる。

『い、いや…。とてもいい出来だった…けど…』

あまりに友好的な言葉をかけられた事に幸村は動揺を隠せないでいる。

『出会い頭に斬り合いになるくらいかと思ったから、驚いただけだ』
幸村が秀吉に言う。

「そんなことするわけないだろう。
可愛い妹が、哀しむ姿を見たい兄なんかいない。
望むなら幾らでも切ってやるがな」

そう言う秀吉に、愛は慌てて、

「秀吉さんも幸村も、物騒なこと言わないで…」

と困り顔を見せる。
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