第8章 私が髪を切る理由(幸村)
二日後の夜、約束通り佐助がやってくる。
『愛さん、仕事は順調?』
愛が用意したお茶を飲みながら佐助が訊く。
「うん。なんとか間に合ったよ。
あと、もう少し今晩やることはあるけど」
『そうなんだ、じゃああまり長居したら悪いね。
明日はどの位の時間にフリーになるの?』
佐助が本題に入る。
「明日は、午前中に届け物したら、もう大丈夫だよ!
秀吉さんにも、夜までに帰るって言ってあるから」
『わかった。
それじゃあ、終わったら城下の外れにある甘味処にきてくれる?』
「うん!わかった」
飲み終わった茶碗を愛に返しながら、
『お茶ご馳走様。
では、また明日。これにてドロン』
そう言うと佐助は天井へと消えていった。
愛は茶碗を片付けると、縫いかけの燕脂の生地を取り上げる。
「よし!ラストスパート頑張ろう!」
そう言うと、黙々と作業を開始した。