第7章 LOVE LOVE LOVE(政宗)
「秀吉、何があった。おかしいだろ、愛がいねぇのは」
宥められたが納得がいかない政宗は、秀吉に迫る。
『あいつはあいつなりに、今日まで頑張ってたんだ。
あんまり責めるなよ。俺たちには明るく振舞っていたが、
多分心が限界だ。くれぐれも優しくしてやれよ…』
そう秀吉に言われ、政宗は驚いて言葉を失う。
秀吉は、信長の元へ着くまで、
政宗がいない間の愛の様子を伝えた。
一通りの城での報告や後処理を終えて、政宗が御殿に辿り着いたのは、
亥の刻に差し掛かろうかという頃。
秀吉から詳しく話を聞いた政宗は、
もやもやした気持ちを抱えたまま部屋に急いでいた。
襖を黙って開けると、部屋には膳が二つ用意されているのが目に入った。
その内容を見れば、それは愛が作ったものだと一目でわかる。
『愛…』
呟くように呼ぶが、部屋には行灯の灯りが灯っているだけで、
愛の姿は見えない。
ふと、縁側との境にある障子が少し空いていることに気付いた。
その隙間からは何かが動いている。
『照月』
政宗が呼ぶと、それはパタパタと先程よりも速く動く。
障子を開けると、縁側の柱に寄りかかり、
照月を膝に乗せてうたた寝をしている愛がいた。
『こんな冷えるところで寝てるのかよ…』
自分の羽織をさっと取り、愛の肩にかける。
愛しい顔を覗き込めば、そこにはくっきりと涙の後が見える。
『心が限界…か…悪かったな、愛』
そう呟いて、衝動的に愛の身体を抱きしめる。
早春の夜風に冷やされて、顔も手も冷え切っている。
抱きしめた反動で照月がピョンと愛の膝から離れ、
同時に愛が目を覚ました。
「わ…政宗…。ごめん、寝ちゃってた、私」
と、慌てて政宗の腕の中でもがく。
政宗は何も言わずに抱きしめている腕に力を込める。
「まさ…むね?」
漸く解放されて政宗の顔を見る。
そこには、困ったような、怒ったような、
何とも言えない表情があった。
「おかえりなさい、政宗」
愛は、出来る限り笑顔で言った…つもりだった。
『なんで言わねぇんだよ…』
「え?何を?」
『文でもなんでも、方法はあるだろ…』
「え?」