第7章 LOVE LOVE LOVE(政宗)
(愛、喜んで飛んでくるんだろうな)
政宗は、安土に帰る馬を最速で走らせながら、
自分の帰りを心待ちにしているだろう愛を思って笑みが溢れる。
(少し予定より遅くなっちまったな…
暗くなる前に着けるか…)
家臣たちは政宗の速さについて行けるものはなく、
疾風のごとく馬を走らせる。
早く笑顔を見ないと落ち着かない。
そんな想いを胸に安土への帰路を急いだ。
漸く安土城の門が間近に迫ると、迎えの集団が目に入ってきた。
政宗は馬を失速させ、ゆっくりと近づいていく。
(愛を見つけたら、真っ先に馬に乗せて行ってやる。
あいつ、驚くだろうな)
どうやって抱きかかえてやろうかと考えながら、
一人一人の顔が見える距離まで迫るが、
政宗の目に一番逢いたい顔は見当たらない。
皆、一人で先に帰ってきた政宗に驚きながらも、
『おかえりなさいませ!』
と、あちこちから声がかかる。
門の前に、秀吉の姿を捉え、政宗は馬から降りた。
『御苦労だったな。お前、また飛ばして先に帰ってきたのか?』
秀吉が呆れたような顔で政宗に言う。
「あぁ…まぁな」
秀吉の言葉への返事も適当に、政宗は愛の姿を探していた。
『愛なら来てないぞ』
秀吉の言葉に面喰らう政宗は
「何でだよ!何かあったのか?!」
と秀吉に今にも掴みかかりそうになる。
『おい、落ち着け!何も無い。
愛は…まぁ身体はなんとも無い』
言葉を濁す秀吉に、政宗は更に苛立ちを露わにさせる。
「どういう意味だ」
鋭い眼つきで秀吉を睨むが、
『まぁ、まずは家臣やみんなが出迎えてるんだ。
そんなに苛々するな。この後信長様にも報告があるだろう』
秀吉は政宗を宥める。
その後ろから、城に残っていた政宗の家臣が歩み出て、
「政宗様、お帰りなさいませ。ご無事で何よりです。
愛様からの言伝で、御殿でお待ちになるとのことで御座います」
その言葉に政宗は、心配と不機嫌が入り混じったような顔で、
「わかった」
とだけ応えた。
『信長様のところへ行くぞ』
「あぁ…」
そう言うと、二人は連れ立って城内へと歩き出す。