第7章 LOVE LOVE LOVE(政宗)
文を貰ったからとはいえ、やはり安心は出来ない。
逆恨みの襲撃がないとも言い切れない。
ただ闇雲に待っていた時よりも、
三日経っても政宗が現れなかったら…と考えてしまう自分に嫌になる。
「照月…」
縁側に座りいつもの日課のように、空を見上げる。
音のない夜の空は、吸い込まれてしまいそうになる。
照月を膝にあげて、ゆっくり背中を撫でると、
幾分か落ち着くような気がした。
照月が寝てしまうと、懐から文を出し眺める。
〈寄り道せずに帰るからな〉
そう締めくくられた政宗の手紙は、
自分を想って書いてくれたのだと思うと、
とても暖かいものに感じられた。
「どうか無事に帰ってきて…」
声に出すと泣きたくなる。
この先、どれくらいこんな思いをするのだろう。
いつか、当たり前になる日が来るのだろうか。
こんな事に、慣れたくはない…。
ポタっと一雫落ちた涙が照月の背中にスッと消えていった。
文を貰ってから三日目の朝、夕刻には安土に政宗の隊が戻ると言伝が入る。
家臣たちが、出迎えに行きましょうと誘いに来るが、
愛は、御殿で待つと伝える。
驚く家臣たちに、愛は
「私は夕餉の用意をしてここで待ちますので、
お迎えは宜しくお願いします」
と告げた。
本当は真っ先に迎えに行きたい。
でも、一目見たら泣いてしまうかもしれない。
その姿は、意気揚々と帰ってくるだろう隊には
似つかわしくない気がするからだ。
「照月、今日はお前と一日中ここで政宗の帰りを待とうね」
と愛が言うと、照月はそっと愛の側により、
傍で丸くなった。
『政宗様が安土城へお戻りになりました』
家臣らが愛の元へ言伝に来たのは陽が大分傾いた頃。
信長への報告などをすませ、御殿に戻るのはもう少し後になるだろう。
愛は、台所を借りに行き二人で食べる夕餉の準備を始めた。
無事に着いたという知らせを受けても、
本人を見るまでは気持ちは晴れない。
政宗の好きな物をと、心を込めて料理を進めていた。