第7章 LOVE LOVE LOVE(政宗)
その後、他愛のない会話を暫くして、
『そろそろ帰るな。何かあればすぐに言えよ?
遠慮はしなくていいから。な?』
そう言うと、愛の頭を優しく撫でる。
玄関まで送るという愛を制して、
『おやすみ』
と優しく微笑む。
「気をつけて帰ってね。ありがとう。
おやすみなさい」
と、襖が閉まるまで見送る。
秀吉が帰ると、愛の側にいた照月が、褥の方へ向かい
振り向きざまに
にゃぁ…
と鳴く。
「ふふふ…まるで、政宗の代わりに私のお守りをしてるみたいだね。
うん。寝ようか」
と、寝着に着替え、照月の待つ褥に向かった。
いつもなら、政宗が温めてくれている布団に照月がいる。
そっと布団をめくり、そこへもぐりこむ。
「照月は政宗の夢見れてるのかな…」
そう言いながら、毛並みの良い背中をなでながら、
静かに眠りについた。
翌日、広間へ向かうと、
『愛に文が届いているぞ』
と、にこやかな秀吉が懐から手紙を取り出す。
「私に?」
不思議そうな顔でその文を広げれば、
そこには愛してやまない人の、力強い文字があった。
パッと明るくなる愛の顔を見て、
そこにいた誰もがほっとする。
『良かったな、愛。政宗が帰ってくるぞ」
そう言うと、秀吉が昨晩のように愛の頭を撫でる。
「うん!」
と文から顔を上げ、秀吉を見上げる目には薄っすらと涙が滲む。
その文には三日の後には安土に戻れること、
怪我もしてないから安心しろ、と書かれていた。
(あと三日で政宗に逢える)
思えば、こんなに長く離れ離れになる事はなかった。
好戦的な政宗は自ら進んでこの戦に当たったが、
それは仕方のないことだ。自分の我儘で止めてとは言えない。
それが、この世の中だから。
そうは言い聞かせても、やはりいつ戻るかもわからない戦は、
心配で押し潰されそうだった。
愛は一通りの広間での仕事を終えると、
政宗の御殿に戻り、女中や家臣らに三日後に政宗が戻る事を伝える。
実は、愛の空元気を心配していたのは秀吉たちだけではない。
御殿に残る政宗の家臣たちも、女中も、
みんなが無理している愛を気遣っていた。