第7章 LOVE LOVE LOVE(政宗)
『それでも、無理を続ければ、お前の心が壊れる』
秀吉は愛から視線を逸らさずに言う。
いつの間にか、褥に寝かした照月は、
愛の隣にピッタリとくっつき丸くなっていた。
「毎日、夜になったらお月様にお願いしてるの。
せめて夢で逢わせて下さいって…」
秀吉は黙って愛の言葉を聞く。
「寝る前は、政宗と出会った頃の事を思い出して眠るの。
でもね、だんだん出会った頃が思い出になっていくんだよね。
鮮明じゃなくなる…おかしいね」
そう言うと、へへっと笑ってみせるが、
どうしても涙が溢れそうになる。
最初は、むやみに口づけをしたり、強引な政宗の行動に振り回されたりした。
無理を言って戦さ場にもついて行ったこともある。
けれど、今は政宗との生活が当たり前になり、
あの頃の気持ちが全て思い出へと変わっていくんだと思う事が
少しだけ怖かった。
『もうすぐあいつも帰ってくる。お前がそんな辛そうな顔してたら、びっくりしちまうぞ?』
「え?」
ふと姿見を振り返る。
「私、そんなに辛そうな顔してるの?」
『少なくとも、楽しそうではないな』
そう言いながら笑う秀吉。
「ありがとう。秀吉さん。
心配してくれて。でも、私は大丈夫だからね」
そう言って微笑む愛を、無性に抱きしめてやりたくなる。
もちろん、そんな事をすれば困るのは愛だ。
そもそも、愛が望むことではない事くらいわかっている。
政宗に知れたら、斬られる覚悟だな…と苦笑する。
『明日は城下にでもいくか?』
少しでも愛の気晴らしになればと思う。
その時、襖の外から女中の声がかかる。
『秀吉様、いらっしゃいますでしょうか』
何事かと聞けば、秀吉の家臣より急ぎ話があるとのことで、
『愛、少し待っててくれ』
と、席を立つ。
間も無く、
『何も、明日でもいい事を…』といいながら
少し機嫌悪そうに戻ってくる。
「秀吉さんも忙しいでしょ?
こんな時間までお仕事の話があるくらいなんだから。
明日は私も仕上げる着物があるし、本当に気にしなくていいからね」
と力の無い笑みを溢す。
『逆に気を使わせちまったな…悪い』
と、バツが悪そうに言う。